チルドレンズドリーム

0 0 0
                                    

 壱へと向かい、時神さんの部屋に出るサヨ。こちらの世界にいるルナが寝ているのを見つけた。
 「ルナは起きてない……。とりあえず、寝ちゃったって言って家に連れ帰った方がいいよな……」
 サヨは目覚めないこちらのルナを重そうに抱え、時神さんのおうちの隣、自分の家に戻った。
 寝ている子は重い。
 サヨはインターフォンを鳴らし、ママを呼んだ。
 すぐにサヨの母、ユリが出てきて寝ているルナに驚く。
 「あ~……お隣さんのおうちで遊んでいたら寝ちゃってさ、おうちに帰ってきた。ママ、布団に寝かせといて。めっちゃ疲れてそうだからしばらく起きないかも!」
 「え?」
 サヨはルナをユリに渡した。
 「ああ、超重かったわ。あたし、これからちょっと用事あるから、あたしは行くね! ママはのんびりしてて。……ちなみに、ルナへのいじめは終わってないよ。先生が見ていないところでエスカレートしてる」
 「……そう」
 ユリはサヨの去る背中を見つつ、小さく呟いた。
 
※※

 「ル~ナ! ねー、あっちのル~ナ!」
 ルナは全体的に桃色な世界で倒れているもうひとりのルナを起こしていた。
 「ん……?」
 「あ、起きた」
 「……ルナ?」
 壱の世界のルナは目の前にいるもうひとりのルナに寝ぼけた顔を向けた。
 「なんか、わかりにくいよね。ルナ達、ルナルナだし。そっちのルナはルーちゃんって呼ぶ!」
 ルナは壱の世界のルナをルーちゃんと呼ぶことにした。
 「ルナは……また、夢の世界にきたの……かな?」
 「うん! ここにいるなら、ルーちゃんはこっちにきてる!」
 「よ、よくわからないよ……」
 壱のルナは戸惑いながらルナを見ていた。
 「ルナね、ルーちゃんの敵討ち……しようとしたんだよ。でも、なんか失敗しちゃったみたい。ルナ、なんかむなしくなっちゃった」
 「敵討ちって……」
 「いじめた奴らを夢の世界に呼んで、ぶっとばしちゃったんだ」
 ルナの発言に壱のルナは目を見開いた。
 「ちょっと待って……ルナはそんなこと、望んでないよ……。暴力は良くないんだよ……。ルナだってケガしちゃうじゃない」
 「そうだよね。ルナ、間違えたのかもしれないなあって思った」
 「……ルナ、怪我、したんじゃないの?」
 壱のルナは心配そうにルナを見た。
 「うん……まあ……。でも、夢の処理になったから、怪我は治ったけど」
 ルナは無理やり微笑むと壱のルナにぴったり寄り添って座った。
 「ねぇ、ルーちゃんはさ、なんでルナを呼んだの?」
 ルナは壱のルナに尋ねた。
 壱のルナは首を傾げる。
 「呼ぶって……?」
 「ルーちゃんがさ、ルナをルーちゃんの世界に呼んだから、ここに来たんだよ。ルナは霊だから、呼ばれたら行く!」
 「ルナは呼んでない……のだけど。でも……会いたいとは思った……かも」
 「……そっか! ……あ、そっか。ルーちゃんは……大人になれるんだ……」
 ルナは壱のルナの未来見をしていた。
 「え?」
 「ルナは……変わらないんだ」
 「ルナ?」
 ルナはなんとも言えない顔で下を向いた。
 「ルーちゃんはさ、ちゃんと大人になってさ、けっこんして、こども産む。この変ないじめ、すぐ終わるよ」
 「……そうなの?」
 「うん。ルナ、未来が見えるからね」
 ルナは立ち上がると空を仰いだ。桃色な空間なのに、空は抜けるような青空。
 「未来が……見える?」
 「見えるよ。ルナはこのまま。変わらないんだ。ルナは大人になれないみたい。だったらいっそのこと、時神皆、子供だったらいいのに」
 「……ルナにはよくわからないけれど、そんなこと言うのはよくないよ……」
 壱のルナは心配そうにルナを見ていた。
 「ルナはね、たぶん、怒られて責任とらなきゃならない。ルナはたぶん、ダメなことした」
 「……暴力はダメだよ……。それはダメだったと思う。ルナのためにしてくれたのはうれしい。でも……やっぱりダメ」
 「……うん、だよね」
 「たぶん、ルナ達、お互い呼びあったんだ」
 二人のルナは再び寄り添って座った。

 トケイはスズと共に世界を飛び回る。トケイのが速いため、スズはトケイの上に乗っていた。
 トケイはスズを落とさないよう注意しながらルナを探す。
 「トケイ、あんたをあたしは信用していいんだよね?」
 「ええっ……信用してなかったの……」
 トケイは動揺して立ち止まった。
 「確認だってば。ほら、進んで」
 「僕はまあ……突然来たからね……。そりゃそうだよね……」
 「更夜が大丈夫って判断したんだから、たぶん、大丈夫だよね?」
 「……大丈夫かを僕に確認するの?」
 不安定な二人は不安定な会話をしている。
 「ちょっと不安になっただけだから、ほら、ルナを探そ!」
 「……うん」
 トケイが返事をした時、ネガフィルムが絡む世界のひとつで赤髪にサングラスをかけた幼女が立っていた。
 「……変な格好の子供がいる……」
 スズがつぶやき、トケイも目線をそちらにうつす。
 幼女はそのまま、世界の中へと入っていった。
 「あやしい……。トケイ、追うよ!」
 「ええ……全然違う案件かもしれないのに……」
 渋るトケイを無理やり動かし、スズは怪しいサングラスの幼女を追った。
 
※※

(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」Where stories live. Discover now