壱の世界、時神達の住む家から神の使いツルが引く駕籠に乗り、プラズマ、みーくん、逢夜、ルルは会話なく、ワイズの城へと向かう。
サキは太陽神の使い、サルを呼び出し霊的太陽に帰って行った。
サヨは皆が乗り込んだ瞬間に走り、人型になったツルの手を掴んだ。
「よよい?」
「しぃー……あたしも一緒に連れてって」
「はあ? お嬢さん、神なのかいね? よよい?」
「わかんない。『K』だよ。でもさ、神力があるみたい」
サヨの言葉にツルは苦笑いを浮かべる。
「まあ、確かに、神力はあるようだよい、よよい! 中の神には極秘ってことかいね?」
「そうそう。極秘! さあ、行って!」
サヨがてきとうに命令し、ツルはため息をついてサヨを抱えて飛び立った。
「仕切るな。迷惑だよい……」
ツルはうんざりしながらも、サヨを落とさないようしっかりと抱えた。
「あんた、意外に優しいよね?」
「さあ? どーかねぇぃ?」
複数羽の鶴に指示を出し、ツルは春の大空へと舞い上がっていった。
「うわ、すげ……マジで飛んでんじゃん」
サヨが遠くなる町並みを眺め、つぶやく。気づいたら違う空間に入っていた。
高いビルが立ち並ぶ最先端な町並みのど真ん中に金閣寺を悪く進化させたような謎の天守閣があった。
「場所はあそこだよい」
「なんじゃありゃ……ま、まあいいや。ていうか、あたし、高天原に入れてんじゃん。じゃあ、神なのかな、あたし」
「知るかよい……」
ツルは城前で降り、先にサヨをワイズの城横にある庭へ移動させた。
「じゃ、よよい!」
簡単に手を上げてツルは去っていった。
「さあ、行くか……」
サヨはワイズの城を睨み付け、ルルやプラズマ、みーくんの後をつける。
「で?」
「っひ!?」
すぐ後ろから声をかけられたサヨは驚いて体を固まらせた。
「何してんだ、お前は」
慌てて後ろを振り返ると、逢夜が立っていた。
「逢夜サン……」
「余計なことしてると、俺が更夜の代わりにお前をお仕置きすんぞ? ケツバットか?」
逢夜はサヨの首根っこを掴み、凄む。サヨは子猫のように首を縮めた。
「待って、か弱い乙女に酷いことしないでってば! お尻の骨、折れちゃうから! わかるよね?」
「どこがか弱いんだ、お前。冗談だよ」
逢夜はあきれ、サヨは苦笑いを浮かべる。
「プラズマに悪いことしたと思ったのか?」
「う、うん……まあ」
「……。じゃあ、一緒に来い。お前、高天原にいる時点で神だ」
「ケツバットはないよね?」
「ばか野郎、怪我すんだろうが」
逢夜が更夜と全く同じ怒り方をしてきたので、サヨは少しだけ笑ってしまった。
一方、プラズマはワイズの部屋の扉を叩いていた。
「時神未来神、湯瀬紅雷王でございます。お忙しいところ、お時間を作っていただき、ありがとうございます」
「どーぞ。紅雷王、何の用かNA? 天御柱の邪魔をして、壱を守る邪魔をして、我々の対応を遅らせた。どのツラさげてきやがったか? 私の軍の彼らは下がらせたぜ」
ワイズは相変わらずのまま、プラズマを中へ入れた。
「まず、謝罪をいたします。このたびは申し訳ありませんでした」
プラズマはすぐに謝罪した。
頭を下げたプラズマを、椅子に座ったままワイズは見下ろす。
「何を謝罪しにきたか?」
「はい、私が天御柱を遮ったこと、現代神アヤが海神を勝手に動かしたことについての謝罪でございます」
「簡単に言ってるが、お前、天御柱に関しては、危ういお前らを止めようとしていたにもかかわらず、攻撃を仕掛けただろうがYO。で、お前、あれだろ? 謝罪にきただけじゃねぇだろがYO? 紅雷王」
ワイズは軽く笑い、プラズマは話を先へ進める。
「はい。交渉に来ました。高天原会議にて、私の罰を最小限にさせていただきたいと思います」
「最小限だと? 時神の主が情けねぇNA。罰くらいまともに受けやがれ」
ワイズは口角を上げたまま、プラズマに言い放つ。プラズマは息を吐くと先へ続ける。
「高天原会議の罰の決定権はお前にある。今回は時神と東の問題だ」
「だからなんだYO」
「わかるだろうが。今回は俺が悪かった。お前の仕事の邪魔をし、迷惑をかけた。罰は受ける。本当に……」
「ああ、謝罪はいいぜ。そのかわり……」
「リカを殺すつもりか?」
プラズマの発言にワイズは眉を上げた。
「はぁ? リカを殺す?」
「俺をもう一度、封印罰にしてリカを殺すか、免除の代わりにリカを差し出せと言うか、どちらかだと思ったんだがね。違うのか? まあ、俺はおそらく、冷林から罰を受けることになるが、お前は冷林を罰しないだろう? 俺に罰を与えたいはずだ。……今回は私が大変な失礼と、罪をおかしました。罰は受けます。申し訳ございませんでした。許容の範囲での罰ならば、今、与えてくださいませ。しっかり反省させていただきます」
「あっははは! バカかYO? お前のやらかしの罰と与える時間を偉そうにお前が決めんな。これは私が決めることだろうがYO」
ワイズが嘲笑し、プラズマはとにかく頭を下げる。
「冷林は呼ばないのか? お前だけで俺を罰するのか?」
「罰を回避する言い訳には苦しいな、紅雷王。お前は冷林を呼びたくないんだろうYO。冷林に罰が行くことを恐れて、私に直接交渉しにきたんじゃねぇのか?」
「その通りだ」
プラズマは素直にそう言った。
「じゃあ、そのバカ丸出しな発言は脅す相手を間違えてんだろうYO。私からの罰は封印刑だ。後先考えないバカな行動を反省するがいい」
「封印刑……私を封印刑にする前に、今回の件について、私がそこまでの重罪なのか、もう一度、お考えくださいませ」
プラズマは冷静に話を進める。
「はっ! 考えるわけがない。そこまで突き詰めるわきゃあ、ねぇだろうがYO? 罪神が有利になろうとしてんじゃねぇYO。まあ、交渉として、許してやるならば、リカを差し出せ」
ワイズは追い詰めてから、新たな要求を出した。
「なぜ、リカなんだ?」
プラズマが睨み、ワイズは飄々と答える。
「なぜか? お前が罰を受けられないというなら、一番『この世界』に影響のない部下に責任を取らせようとしただけだYO」
「伍への影響は考えねぇわけか」
「伍なんて私には関係がない。私は壱を守る神だ」
「もう一度、俺の罪について考え直そうか。お前の部下からの発言も気になるんだよ。部下を呼べ」
プラズマの言葉にワイズは再び笑うと、足を組み換えて座る。
「リカを差し出せば、許してやるって言ってるんだYO。単純な話だ。ああ、ちなみに、リカを殺すなど一回も言ってねぇYO? そりゃ、中傷だろうがYO」
「ああ、なるほどな。わかったよ」
プラズマはワイズの小馬鹿にした言い方、発言に怒りを露にした。冷静な気持ちがなくなり、いらつきが勝ち、口角が勝手に上がる。いらだちを通りすぎてのあきれた笑みだった。
「てめぇら……」
プラズマは顔を上げ、ワイズを恫喝した。
「てめぇら、時神ナメんのもいい加減にしろよ」
怒りを通り越すと、自暴自棄になり、笑ってしまう。
プラズマは息を荒げ、ワイズを攻撃的に見据えた。
「ああ? おめぇらをなめたことはねぇYO。なめたら壱が滅ぶんだYO。てめぇは時間の管理をしてるんだ。自覚が足らねぇんじゃねぇのか? 紅雷王」
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(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」
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