最後まで戦え!

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 サヨは転がっていたプラズマと冷林を止め、ルナに抱きついた。
 「ルナ! やったんだよ! あんた! お姉ちゃんの言ったこと覚えてたんだね! あんた、やっぱ賢いわ!」
 「お、お姉ちゃん! ルナはちゃんと覚えてた! プラズマが助けてくれた!」
 ルナはにこやかに笑いながらプラズマを仰いだ。
 「え~......それより、サヨ......」
 プラズマが盛り上がるサヨを止め、重要なことを尋ねる。
 「なんかあったんじゃねーの? あちこち切り傷......。こんな調子だと更夜からお仕置きだぞ。あの男が大好きなお尻百叩きの刑なわけだ」
 「あ~......首突っ込んだわけじゃないんだけどー、リカがワイズに消されそうだったから、現世に連れてって守ったんだよん。それの怪我。なんか、神力が刃物みたいに刺さってきて、変な感じだったわ~。てか、おじいちゃんはほとんどお尻なんて叩かないんだから! 私は三回くらい......やられたか? ま、まあ、あたしやルナが世界を脅かしたり、消滅するようなことをした時だけ、マジで怖いから!」
 「今回、対象だな。サヨ。神力、わけてやるよ。俺も限界に近いんで、たいしてあげらんないが......。あんまり無理すんなよ」
 プラズマがサヨの手を取り、傷口に神力を送った。
 「あ、ありがと。おじいちゃんは子供のお仕置きの仕方がわかってないから、全部お尻百叩きになんだよね~。ゼロか百だからね、あのひと。あたしは子供じゃないから、今回はなにされっかなー。ビンタだったらどうしよう、プラズマくん!」
 サヨはわざと潤んだ瞳でプラズマを見た。
 「そりゃ、ないだろ。俺はな、あいつにそれはただの暴力だと言ったんだ。もうやらないさ。そんなことをやるタイプじゃないだろ? あの男は気性の荒さを出さずにあんたらの相手をしているんだ。あの男は立派だよ。親がどんな存在かも知らないのにさ」
 プラズマの言葉にルナが目を伏せた。
 「おじいちゃんって、怖いんだね。本当は......」
 「そんな怖がるなって。ルナのパパみたいなもんだろ? ああ、ママっぽくもあるか。とりあえず、親だ! ルナには優しいじゃないか。大切に思われてるんだ、安心しろ。な?」
 プラズマに言われ、顔を上げたルナは小さく頷いた。
 「で、ワイズはどこに? リカは?」
 プラズマが再びサヨに視線を戻す。
 「ああ、よくわかんないけど、プラズマが出てきたら、驚くくらい素直に消えた」
 サヨの言葉にプラズマは唸った。
 「怪しすぎる。まあ、とりあえず、あんたらは大人しくしてろ。後は俺と冷林がワイズを罪に問う。まあ、相殺される未来がみえるがな。剣王を殺しに行った更夜の罪で。つまり、誰も罰を受けない」
 「そうなるわけね~、やっぱ」
 サヨが頭を抱え、プラズマは冷林に目を向ける。
 「冷林、高天原会議を開く。今回は月と太陽も呼べ。リカが現世にいるようだ。リカも探すぞ」
 プラズマに命じられた冷林は素直に頷き、ツルを呼ぶ。
 「よよい、お呼びかよい!」
 ツルは相変わらず高速で来た。
 「リカを探して高天原まで行ってくれ。駕籠に乗るのは俺と冷林だけだ。......サヨ、ルナを連れて更夜の家に戻って休んでろ。すぐ戻る。怪我をしてるんだ、あんまり動くなよ、更夜が心配する」
 プラズマはサヨにそう言うとすぐに、冷林を連れてツルが引く駕籠へ入っていった。
 「では、よよい!」
 ツルは美しく飛び上がると、宇宙空間に消えていった。
 「プラズマって、本当に頼りになるよね。ルナ、上に立つっていうのはさ、けっこう難しいんだよ。だから、ルナはプラズマみたいになるんだ。......人間時代に皇族だったのわかるわ」
 「んん?」
 ルナはわかっていないようだった。
 「まあ、いいや。じゃあ、帰ろ......」
 サヨが言いかけた時、目の前に海辺の空間が開いた。
 「な、なに?」
 ルナが戸惑いながらサヨを見、サヨは海を見て目を見開いた。
 「ここ......過去で行った海じゃん。な、なんでここで?」
 「......あ......リカが」
 ルナがつぶやき、サヨは眉を寄せる。
 「リカが傷だらけで倒れてる!」
 ルナは過去見か未来見かでリカの状態を見抜き、叫んだ。
 「なんだって! なんでリカがこの中にいるわけ? あたし、現世に送ったんですけどぉ! と、とりあえず、助けに行こう!」
 サヨはそこまで言ってから、少し考えた。これは危険なことなのではないかと。
 この海辺にいたのはスサノオだ。
 「どうしよう」
 「お姉ちゃん、ダメだったら過去戻りで戻ろう!」
 「そんなに多様しちゃダメ! よく考えなきゃ」
 「でも、空間が閉じちゃう!」
 ルナが目の前の空間を指差す。空間は徐々に小さくなっていた。
 「......行こう......」
 サヨは決断をし、ルナと共に空間へと足を踏み入れた。
 「ああー、マナがやられたから一部穴が開いたか。そんで、事情通な方の姉妹が来るってか?」
 静かな海辺に立つスサノオは物語の終わりを感じていた。
 「ようやく終わるな。ちょっと前の俺はまだ、過去の三柱を追い払ってんのかね」
 海原に今までなかった風が吹く。
 「ほら、スサノオがいる......」
 サヨの震える声を聞いたスサノオは深くため息をついた。

(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」Where stories live. Discover now