闇の中に光を

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 「通してっ!」
 サヨは先に行かせてくれない天御柱神(あめのみはしらのかみ)をすり抜けようとするが失敗し、代わりにプラズマが切り刻まれる。
 「……刃物みたいだ……」
 プラズマがなんとか耐え、小さく呟いた。
 「で? 騒いでんけど、マガツヒがなんだって?」
 天御柱神は小さな竜巻を発生させ、プラズマを襲う。
 プラズマは神力で弾くが、やはり切り刻まれた。
 「俺の神力を防げもしねぇのに、アイツに勝つつもりなの? 節度をわきまえろよ、紅雷王。お前がこんなにバカだとは思わなかったぜ?」

 天御柱神は困惑気味に笑い、プラズマに威圧をかけた。 プラズマは威圧を受け流し、神力を高める。 「バカな事はわかってんだ。時間がない。通してくれ」 「通せねぇよ。お前らが死ぬだろうが」 「通してくれ!」 プラズマが叫んだ刹那、アマテラスの神力が一瞬表に出た。 「お前、本当はこんな程度の神力じゃねぇだろ。『引っ張られるのを抑えてる』のか?」 天御柱神に意味深な事を言われたプラズマはわずかに目を見開いた。 「……俺は知らない」 「ああー、俺も同じだぜ? 昔の凶悪な神力を抑えてる。お前は……たぶ...

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 天御柱神は困惑気味に笑い、プラズマに威圧をかけた。
 プラズマは威圧を受け流し、神力を高める。
 「バカな事はわかってんだ。時間がない。通してくれ」
 「通せねぇよ。お前らが死ぬだろうが」
 「通してくれ!」
 プラズマが叫んだ刹那、アマテラスの神力が一瞬表に出た。
 「お前、本当はこんな程度の神力じゃねぇだろ。『引っ張られるのを抑えてる』のか?」
 天御柱神に意味深な事を言われたプラズマはわずかに目を見開いた。
 「……俺は知らない」
 「ああー、俺も同じだぜ? 昔の凶悪な神力を抑えてる。お前は……たぶん、俺を負けさせる力を持っている。すべての母の力はな、強いんだ」
 「……?」
 天御柱神の発言にプラズマは眉を上げる。
 「その力使うと、『お前がどうなるかわからない』んだろ? まあ、いいや。で? どうすんの? このままやんの?」
 「……」
 血が滴る音がやたらと大きく聞こえる。
 「プラズマくん……」
 体を震わせているプラズマにサヨが気がつき、慌てて駆け寄った。
 「サヨ……」
 「もう……いいよ。酷い怪我になっちゃう」
 サヨは争いが嫌いだ。
 彼女は誰も恨んではいけない『K』であるからだ。
 「プラズマくん! もういいよ……ねぇ!」
 サヨは咄嗟にプラズマの安全を確保しようと動いた。
 この戦いを諦めようとした。
 プラズマはなんとか体を起こし、叫ぶ。
 「いいわけないだろう。何のためにここまで来た!」
 「だってこのままじゃ、あたしが通り抜けを失敗するたびにプラズマくんが傷つくじゃん!」
 「俺の心配なんて今、してる場合じゃない!」
 サヨにプラズマは鋭く言ったが、すぐにサヨが持つ気質に気がつき、うなだれた。
 「あんたは平和を守る『K』だ。こんなこと、言うべきではなかった。ごめんな」
 「プラズマ……くん」
 サヨがどうすればいいか迷っていると、プラズマが小さく言葉を漏らし始めた。
 「……頭を下げるんだ、サヨ。頭を下げるんだ。俺は勝てない。頭を下げてお願いするんだ」
 プラズマの言葉に天御柱神の眉が上がる。
 プラズマは目に涙を浮かべ、情けなく泣きながら砂漠に頭をつけた。
 「お願いします。約束をしてしまったのです。どうか、死に急ぐ魂をお救いくださいませ。お願い申し上げます。どうか、先へ進む許可を……」

 天御柱神は困惑気味に笑い、プラズマに威圧をかけた。 プラズマは威圧を受け流し、神力を高める。 「バカな事はわかってんだ。時間がない。通してくれ」 「通せねぇよ。お前らが死ぬだろうが」 「通してくれ!」 プラズマが叫んだ刹那、アマテラスの神力が一瞬表に出た。 「お前、本当はこんな程度の神力じゃねぇだろ。『引っ張られるのを抑えてる』のか?」 天御柱神に意味深な事を言われたプラズマはわずかに目を見開いた。 「……俺は知らない」 「ああー、俺も同じだぜ? 昔の凶悪な神力を抑えてる。お前は……たぶ...

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 プラズマは悔しかったのではない。千夜を待っている儚い魂、華夜を救ってあげられないことを悲しんでいるのだ。
 「時神の頂点に立つ男が泣きながら土下座か。お前のその慈悲深い心、アマテラスにそっくりだな。残念だが、今回は世界の危機だ。早く動かないと手遅れになる」
 「……そうか。なら、やはり力ずくで行くしかないんだな。お前は俺の力を削ぎたいんだろ? リカを殺そうと動くんだろうが」
 「ワイズについては俺は言わないぜ。東を罪に落とすような発言、よろしくないな」
 天御柱神は特に何の感情もなく答えた。
 「そうかよ。わかったよ。……サヨ、走って天御柱を抜けろ」
 プラズマはサヨにそう命じたが、サヨは戸惑った。
 「だってっ! 抜けられなかったじゃん! ……!」
 サヨが叫んだ刹那、プラズマの神力がはね上がる。髪が伸び、霊的着物に変わった。
 「……行け」 
 プラズマに言われ、サヨは唾を飲み込むと走り出した。
 「おい、待てっ……」
 サヨを無傷で追い返そうとした天御柱神の頬に神力の矢がかすった。燃えるように熱い神力の矢。
 「アマテラスの……」
 天御柱神はつぶやきつつ、さらにサヨを追う。しかし、サヨと天御柱神の間に神力の炎が燃え上がり、怯んだ天御柱神の後ろから神力の槍が多数襲った。
 「ちっ!」
 天御柱神が初めて苛立ちを見せ、プラズマを睨んだ。
 プラズマは静かな表情で的確に天御柱神を襲う。いままでにない集中力、命中率で、なぜか燃えるような炎の神力。
 サヨはなんだかわからないまま、天御柱神を抜け、とにかく走った。
 「アマテラスの神力、混ざってんぞ。なんだ、一度、神力を低下させたことがあるのか?」
 天御柱神はプラズマの頭に太陽の冠がノイズ混じりに現れたり消えたりするのを眺め、言う。

(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」Where stories live. Discover now