最後まで戦え!

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 「さてと......こっちは俺の目的もなにもかも知ってるあいつらなわけだ」
 スサノオが威圧を込めつつ、サヨ、ルナを見た。サヨは不意打ちの失神を防ぐため、結界を辛うじて張り、神力を回避した。
 「せっかく来たんだ。この異界で消滅し、ワールドシステムに取り込まれればいい」
 スサノオは口角をあげながら、神力を向ける。
 サヨはスサノオの神力を再び、危なげに結界で弾き、どうするか考えていた。
 「お、お姉ちゃん......あの神怖い」
 後ろでは、ルナが萎縮しながらサヨを見ていた。結界を張りつつ、サヨは様々なことを一気に考え、一つだけ良いやり方を思いつく。
 「ここは弐だ。なら、Kの能力を使う! 弐の世界管理者権限システムにアクセス......『排除』!」
 サヨはスサノオを弐の世界から外に追い出そうとした。
 しかし、そううまくはいかなかった。
 「『拒否』」
 スサノオはKではないはずなのに、なぜかシステムにアクセスした。
 「嘘......。『排除』!」
 「『拒否』」
 「くっ......『排除』!」
 「『拒否』」
 「......なんで......」
 サヨは動揺しながら、慌てて結界を張る。今回は少し結界が遅れ、サヨの体を鋭い神力がかすっていった。
 「おねえ......ちゃん......」
 ルナが不安げな声をあげる。
 サヨは息を吐くと、もう一度、スサノオを見上げた。
 「なんで、『排除』されないの?」
 「俺は『K』ではないが、システムの理解はできてんだ。『K』の言葉を弾くくらい簡単よォ」
 スサノオは笑いながら、手から剣を出現させた。
 「残念だったな。ふたりまとめて『削除』か?」
 「くっ......」
 「まあ、俺は女や子供を切り刻む趣味はねぇんで、一撃できめるぞ」
 「やばい!」
 サヨはルナをかばいながら冷や汗をかいた。
 刹那、スサノオの後ろからおぼつかない足取りで血にまみれたリカが現れ、半分意識のない状態で手をスサノオに向けた。
 「アマノミナカヌシが命じる......『消えろ』」
 リカの頭に電子機器のシャットダウンボタンが現れ、アマノミナカヌシの神力がスサノオを貫いた。
 「なんだ! ......ちっ!」
 スサノオはリカの言葉通りにその場から消えた。

 リカはスサノオがいなくなったのを確認すると、そのまま血を吐いて砂浜に倒れ、意識を完全に失った。 「

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 リカはスサノオがいなくなったのを確認すると、そのまま血を吐いて砂浜に倒れ、意識を完全に失った。
 「......え......。り、リカ!」
 サヨとルナは戸惑いながらリカに近づく。
 「リカ!?」
 「ひっ......」
 サヨがリカを抱き起こし、ルナは怯えた顔でリカを見ていた。
 「リカ......」
 サヨが息を飲んだ時、目の前に紫の長い髪をした、高貴な雰囲気の水干袴を着た男が表情なく現れた。
 「もう、なんなの! あんた誰? 敵?」
 サヨが困惑しながら叫んだが、男は首を傾げていた。
 「僕はツクヨミ。アマノミナカヌシのリカは死んだの?」
 物騒な事を淡々と言う男にサヨもルナも固まる。
 「敵じゃないわけ? 襲ってこないの?」
 「敵? よくわからないけど、戦いは終わったみたいだね。そのうち海神が来るから、向こうに返してくれるさ。......今回の戦いも見させてもらったよ。じゃあね」
 ふたりはワダツミのメグにそっくりな話し方をしているツクヨミを呆然と見つめる。固まっている内にツクヨミは消えており、代わりにメグが現れた。
 「ああ、またここにいるの? リカは生きてる?」
 淡白なメグにサヨはどう答えるか迷っていた。
 「まあ、いい。元の世界に返してあげる。私はここに入った魂を外に出す役目だから」
 「え......」
 サヨとルナが同時に戸惑っていると、メグはサヨ、ルナ、リカをふわりと浮かせた。
 「では、サヨの心の世界まで送る」
 「え......? ちょ、ちょっとまっ......」
 サヨはメグに声をかけるが、メグは止まらずに進み始めた。

 プラズマと冷林はツルが引く駕籠に乗り、現世に入った。
 プラズマは霊的着物からもとに戻り、神力を消耗しないようにする。
 現世に入ってから必死にリカを探した。
 もう暗くなってきている。
 夕日がなくなればリカの捜索は困難だ。
 「リカ、いないな......。現世のどこにいるかもわからない......」
 プラズマがそう呟いた時、ツルが思い出したように口を開いた。
 「ああ、そういえば、そこらの木に引っ掛かっていた彼女を救出し、高天原西に送ったよい?」
 ツルの言葉にプラズマは頭を抱える。
 「なんだって! 早く言えよ......。じゃあ高天原西に向かえ!」
 「そんな必死にくるなよい! 誰にも見つからずに行けだかなんだか言われたんで、守秘かどうか迷っただけだよい」
 「あ、ああ、悪かった」
 ツルの言葉に素直にあやまったプラズマは、考える。
 ......リカ、何をしていたんだ?
 どういうことかわからないプラズマはとりあえず、西の剣王領に向かう。高天原会議まで時間があまりない。
 少し前、冷林から見えた未来見で、剣王に喧嘩を売ったらしい彼らの心配も始める。
 「栄次、更夜、アヤ......無事でいてくれ......」
 ツルは高速で高天原西にたどり着いた。剣王の城、天守閣付近におろされ、プラズマはツルにその場にとどまるように言ってから、冷林を連れて走り出した。
 「ああ、お前が例のアイツか」
 行き道で更夜にそっくりな銀髪の男に出会った。
 「......?」
 プラズマが眉を寄せたので、銀髪の青年は丁寧に自己紹介を始める。
 「わたくしは、厄除け神、ルルの夫で、武神の望月 逢夜(おうや)と申します。更夜は弟です。お初ですね。......では、あなた様のお名前をお聞かせくださいませ」
 逢夜が丁寧に名乗ったので、プラズマもとりあえず、丁寧に名乗る。
 「......更夜の......。失礼いたしました。わたくしは時神未来神、湯瀬紅雷王でございます。更夜のお兄様でございましたか。失礼をいたしました。それで......申し訳ございませんが......ひとつ、確認をさせていただきたい。......なぜ、西に?」
 プラズマの発言に逢夜は軽く笑った。プラズマは逢夜が本来、東にいる神だと気がついている。
 「いやあ、鋭いですね。雇われです。剣王と戦う前に、本当に西に入れるかを試験する役目で、こちらにおります」
 「なるほど......更夜を巻き込むつもりか」
 プラズマが一言発した時、逢夜は一瞬真顔になったが、すぐにもとに戻った。
 「さすが未来神。俺達のこれからを占ってくれないか? ......なんてな」
 「占いは幕末からやめたのだ。慶喜の逃げる手伝いをしてからな」
 「ほー、徳川家か。江戸に入る前に俺は死んでるからな。平和な時代を願う」
 逢夜の言葉にプラズマは少しせつなげな顔をした。
 「人間だったのだな。戦死か。妻がいるならば......再び戦に入り込む事もないのではあるまいか......。更夜もそうである。あの男も戦国が抜けておらぬ。我はこういう人間を見た時いつも、安徳帝を思い出すのだ。あの子は徳子と......いや、もう終わった話だ。では......失礼する」
 プラズマは逢夜に軽く挨拶をすると、歩き出した。

(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」Where stories live. Discover now