「あ、あんた、なんで栄次の名前、知ってんだ? ていうか、あんた……名前は……」 「……望月……更夜(こうや)だ。それで、あなたは?」 「お、俺か? 湯瀬(ゆせ)プラズマだ」 プラズマは変な威圧を感じつつ、苦笑いで自己紹介をした。 「ほう。それで? サヨ、これはなんだ?」 「あ、あたしにもわかんないってゆーかぁ……、そこの倒れている女の子がなんか……」 サヨは恐る恐るリカに目線を向ける。 「起こすか」 「乱暴はしちゃダメだからね」 「ふっ、乱暴か。バカにするな」 サヨの言葉に更夜は冷笑を浮...

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 「あ、あんた、なんで栄次の名前、知ってんだ? ていうか、あんた……名前は……」
 「……望月……更夜(こうや)だ。それで、あなたは?」
 「お、俺か? 湯瀬(ゆせ)プラズマだ」
 プラズマは変な威圧を感じつつ、苦笑いで自己紹介をした。
 「ほう。それで? サヨ、これはなんだ?」
 「あ、あたしにもわかんないってゆーかぁ……、そこの倒れている女の子がなんか……」
 サヨは恐る恐るリカに目線を向ける。
 「起こすか」
 「乱暴はしちゃダメだからね」
 「ふっ、乱暴か。バカにするな」
 サヨの言葉に更夜は冷笑を浮かべつつ、リカを軽く揺すった。
 刹那、リカは唐突に意識を戻した。
 「はっ!」
 「おー……、一瞬で戻った。さすが、忍者じゃーん!」
 サヨの呑気な声を聞き流し、リカはわかりやすく怯える。
 「な、何が……どうなって……」
 「どうなってもない。ここは弐の世界内、サヨの心の中。あなたらはかくまえとここにやってきた。それだけだ」
 リカは目が覚めたと思ったら、冷たい声の男に話しかけられていた。
 「えーと……あなたは誰ですか?」
 リカは眼光鋭い銀髪の男、更夜に当然恐怖を抱く。
 また、殺されるかもという予感も頭によぎった。
 「俺は望月更夜。サヨの先祖であり、霊。そして、弐の世界の時神だ」
 「弐の世界の時神? 時神ってこんなにたくさんいるんですか?」
 リカは目を忙しなく動かしつつ、動揺した頭で更夜を仰ぐ。
 「この世界も時間管理はいる。弐に住む霊達は、自分の魂内のエネルギーを消費しつつ、新しいエネルギー体として消滅するまで、この世界に存在することになるからな。その時間管理がいるだろう。まあ、そんなことはいい。あなたは何をしにきた」
 「わけわからない……ですけど、一応、ワールドシステムを開きにきたんです」
 「なんだ、それは」
 更夜は眉を寄せた。
 眉を寄せると栄次よりも怖い。
 責められているような気持ちになり、リカは顔を青くした。
 「ごめんなさい。私もわかりません……」
 「わからない……だと。では、何もわからんではないか」
 「は、はい……ごめんなさい」
 さらに睨み付けられ、リカは震えながら後退りをした。
 「あー、リカをいじめないでくれ。彼女は想像物がなくなった世界伍(ご)から来た時神なんだが、想像物を信じる壱の世界で異物になってしまい、異物排除データのある神に狙われてんだ。で、ワールドシステムに干渉してみようって話になったわけで……」
 「ワールドシステムとはなんだ?」
 更夜がさらに眉を寄せたので、プラズマは冷や汗をかきながら、てきとうに説明する。
 「んあ~……アマノミナカヌシってやつがなんか、関与してるとか」
 「アマノミナカヌシ……世界の創造神の一柱か。なぜ、そんなものが開く……普通は開かんぞ」
 「知らねーよ……」
 「くはは……あなたらを見てればわかるか……くくっ」
 更夜は声を抑えて笑った。
 「笑いのツボがわからない……」
 プラズマはサヨを横目で見て、サヨは苦笑いで頬をかいた。
 「あたしにもわかるわけないじゃん」
 「……アヤ、栄次さん……」
 リカはアヤと栄次を心配そうに見ていた。彼らはリカを守ってくれたが、本来なら傷つかなくてよい神達だ。
 タケミカヅチもリカしか狙っていない。
 「娘、あの男の治療はしてやる。奴らの目が覚めるまで、どうするか確認することだ」
 更夜はリカにそう言うと、栄次の怪我の様子を見始めた。

※※

 「へぇ、壱の時神達に対し、『世界』がリカの味方をしろという『命令』を出したわ。適応になったのかな? ただ、まだ『世界』はデータをとってる。壱のシステム通りに向こうの神は動いてるから」
 雪の降る公園の滑り台の前に立ったマナは愉快そうに笑っていた。
 「さあな、ワールドシステムに入り込んだ時にどう世界が変わるか、楽しみだがね」
 公園のベンチに座っていた紫の髪の男神もいたずらっ子のように微笑んだ。
 「スサノオ様、リカはこちら産まれの神、向こうにはかなりの影響を与えるはず。世界が繋がる可能性も」
 マナはゆっくり歩くと、紫の髪の男、スサノオの横に座った。
 「どーなるかねぇ? 世界が『また繋がったら』激しい戦いが起きるのかね? 想像物の定義がどうなるのか、楽しみでもある。ただ……アマテラスあたりが邪魔をしてくる可能性も……」
 「あー、アマテラス様は平和を願い、すべてを救う神だからね、争いになるとわかれば、介入してくるわ。たぶんね」
 マナは落ちてくる雪を捕まえる。
 「ツクヨミはどうかな」
 雪はマナの手の中に残ったまま、溶けなかった。
 「さあ? ワダツミの先で大人しくしてんじゃねーの? 弐の世界の先で黄泉の門番してるだろ? アイツ」
 「そうだったっけかね……」
 マナはスサノオに向かい苦笑いを向けた。

 更夜は栄次の怪我を治療すると、何も言わずに部屋を出ていった。お礼を言うのを忘れた事にリカは後から気づいたが、もう遅い。
 とりあえず、リカはサヨに目を向ける。
 「ん? なーに?」
 サヨは満面の笑みを向けてこちらを見てきた。
 「ワールドシステムに入るために……さっきの剣がいるんですが……持ってます?」
 リカはサヨが何も持っていないことに気づき、冷や汗をかいた。
 「ん? ああ、これ?」
 サヨは右手をかざして剣を出現させた。
 「あ、それです……。も、持っていたんですね……。い、今、手から突然出てませんでしたか?」
 「ん? そりゃあ、霊的武器だから、当たり前じゃん」
 「……その当たり前がわからない……」
 不思議そうな顔をしているサヨを横目に見つつ、リカは頭を抱えた。
 「で? あんた、ワールドシステムとかいうの出してどーするわけよ?」
 「……逃げようと思って出そうとしていたから、よくわからんです」
 リカは震える身体を抑えるべく、自身の身体を抱く。
 プラズマがリカの背中を撫でながらサヨを仰いだ。
 「俺の未来見でワールドシステムについて見てみようとも思ったが、リカのループ未来が強すぎて見えないんだ」
 「ふーん……じゃあ、開いてみるしかないってこと? 打開策として」
 「そういうことだ。ワールドシステムならリカのループを終わらせられる何かがあるかもしれないだろ?」
 「まあ、そうかもしれないけどー、あたしも知らないからね?」
 サヨはプラズマに苦笑いを向けた。
 「う……」
 うめき声と共に栄次が目覚めた。
 「栄次さん!」
 リカが慌てて栄次の元へ行く。
 「リカ……無事か……」
 「栄次さんっ。ごめんなさい……怪我をさせてしまい……」
 「……泣くな。あやまらなくて良い。ここは?」
 栄次は辺りを見回してから首を傾げる。
 「ここは、あたしの心の中で、弐の世界だよーん」
 リカの頭に飛び付いたサヨが愉快に栄次を覗き込み、言った。
 「……弐?」
 「まあ、いいの、いいの。それよか、弐の世界からワールドシステムを開きたいんじゃなかった? ね、リカだっけ? あんた」
 サヨが面倒な会話をすべて省き、リカに微笑む。
 「あ、はい。リカです……」
 「かたっくるしいなあ! たぶん、そんなに年齢変わらないからタメ口でいいって」
 「う、うん……じゃあ、遠慮なく……。ワールドシステムは弐からじゃないと開けなかった。だから……ここから……」
 サヨにおされつつ、リカは栄次に細々と語った。
 「そんな話だったのか?」
 「だったらしいぜ」
 栄次の横にプラズマが座り、お茶を差し出す。
 「あ、まだ飲んでねーから、飲む?」
 「……すまぬ……」
 「しかし、アヤが起きねーな……。剣王のやつ、アヤまで……。起こしてみるか? ……リカかサヨ、やってみろよ」
 プラズマが戸惑いつつ、リカとサヨを見る。
 「……アヤさん……」
 「リカ、泣くなよ。死んでねーから……」
 「ずっとわけわからないまま、頑張ってきたけどっ……こんなに親切にされたことなかったから……心が痛いんです」
 リカは我慢できなくなり、嗚咽を漏らしながら涙を流し、目を何度もこする。
 「リカ、同じ時神じゃねーか、助け合おうぜー」
 プラズマがリカを慰める横でサヨがいたずらっ子のような笑みを浮かべ、立ち上がった。
 「じゃ、あたしが起こすわ。アーヤー! へいへい! ツンツンしちゃうよーん!」
 「最強に頭悪い起こし方を始めたな……」
 アヤの脇腹を突っついてるサヨを眺め、プラズマは頭を抱えた。
 「うう……」
 そのうち、アヤの呻く声がし、不機嫌そうなアヤが身体を起こした。
 「……なんなの?」
 あまりにしつこい起こし方だったので、アヤの第一声はこんな感じだった。
 「と、いうか、ここは……?」
 「あたしの世界で弐の世界! 四回目なんですけどー?」
 アヤの言葉にサヨがうんざりしたように答える。
 「弐の……」
 「アヤ! 良かった! 無事だったんだ! 死んじゃったかと思った!」
 アヤの頭が回転する前にリカがアヤに飛び付いた。
 「……剣王は?」
 「とりあえず、まいた!」
 アヤの言葉にすぐさま答えるサヨ。
 「そう……。よくわからないけれど……無事ってことね」
 「そうそう」
 サヨは笑った。
 「皆、起きたからワールドシステムに入ってみるか? アヤはまだ休む? お茶飲む?」
 プラズマが口をつけていなかったサヨのお茶をアヤに差し出す。
 「あ、ありがとう……」
 「お茶係じゃん、おにーさん」
 サヨの声を聞き流しつつ、アヤはお茶を口に含み、落ち着いた。
 「……落ち着いたわ。プラズマ、ありがとう」
 「ああ、無理すんなよ。平気か? けっこうきただろ?」
 「ま、まあね……。私は大丈夫よ。あなたと栄次のおかげね」
 「照れるな~、な? 栄次」
 アヤの言葉を聞いたプラズマは軽く笑いながら栄次を見る。
 「感謝されることは何もしておらぬ。負けたしな」
 栄次はため息をつくと、腰に刀を差し、立ち上がった。
 「落ち込むなよ、あんたはよく頑張ったって」
 「プラズマ、手当てをしてくれたのか? すまない」
 栄次は身体に包帯がまかれているのに気がつき、プラズマにお礼を言ったが、プラズマは首をかしげた。
 「俺じゃねーよ、サヨの先祖のおかげだよ」
 「その娘の……?」
 「まー、いいから、どうすんの? ワールドシステム」
 プラズマと栄次の会話を切り、サヨが入り込む。
 「ああ、皆が大丈夫ならやってみるか?」
 プラズマがリカに目を向けた。
 「あ……はい」
 リカは震える声を頭を振って散らし、息を吐く。
 「はい」
 もう一度、今回はハッキリと言葉を口にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(2020〜)SF和風ファンタジー日本神話「TOKIの世界譚」Donde viven las historias. Descúbrelo ahora