更夜は時神達の家に入るなり、ルナを鋭く呼んだ。
「ルナっ!」
「ああ、おじいちゃん」
ルナはふてくされながら笑う。
「何があったんだ」
ルナの近くで倒れているリカを見て、更夜はルナを睨み付けた。
「また、現世で力を使ったのか! 悪い子だ! もういい加減に……」
「おじいちゃんはルナが嫌いなんだ! だからルナを叩くんだ!」
更夜もルナも余裕のある話し合いはできなさそうだった。特に更夜はいつもの雰囲気がなく、かなり感情的で荒い。
「ルナはね、時間を操れる。おじいちゃんを従わせることもできる。だから、ルナのがえらいんだよ?」
ルナの発言に、更夜は自分の言葉が全く伝わっていなかったのかと疑った。難しい部分は説明しなかったが、理解できるように話したつもりだった。
同時にルナが理解しないことに対し、怒りがこみ上げる。
「世界が滅ぶと言っているんだ! 何度も……」
「更夜! やめろ!」
栄次が咄嗟に声を上げたが、間に合わず、更夜はルナの頬を叩いていた。
「何度も言わせるなっ!」
「痛いぃ……おじいちゃんがぶった!」
ルナは泣きながら叩かれた頬を押さえる。更夜に初めて殴られたルナは動揺し、さらに泣き始めた。
「……ルナ、言いつけを破る子は悪い子だ。今日は厳しい……お仕置きだぞ」
「更夜っ!」
栄次が止めに入るが、頭に血がのぼっている更夜は栄次をどかし、泣き叫ぶルナの胸ぐらを掴んで立たせる。
プラズマ、アヤは更夜の雰囲気に困惑していた。あきらかに更夜らしくない異常な行動。
「お前は俺の言ったことがなぜわからない!」
更夜は再び手を上げ、今度は叩いた頬と別の頬を叩いた。
「あぐっ……痛い!」
ルナは痛みに呻き、さらに大声で泣き始めた。更夜はルナにさらに手を上げる。
「お、おい……待て!」
プラズマが止めようとしたが、更夜はルナを叩き続けた。
アヤは怯えてプラズマを見ている。
「……っ。やめろ、望月更夜」
プラズマが声を上げ、栄次が更夜の手をとって壁に押し付けた。
「な、なにをする!」
「お前はこうしないと止まらないだろう。自分がしたことを考えろ! 頭を冷やせ、更夜」
栄次は神力を少し解放し、更夜を力をづくで止めた。
「……もう、帰らねば……スズを待たせている。ルナ……帰るぞ」
少し落ち着いた更夜は戸惑いながら、ルナを見る。ルナの顔は更夜により赤く腫れていた。
唇から血がしたたっている。
「う……うう」
震えているルナの背をアヤが優しくさすり、不安げにプラズマを仰ぐ。
プラズマはアヤに目配せをすると、更夜をまっすぐ見据えた。
「更夜、一度ルナから離れるんだ。頭を冷やして明日の朝、また来い。ルナは今日、うちで預かる。……更夜、ちょっと来い」
プラズマは更夜の肩を軽く叩くと廊下に出るよう促した。更夜はいつもの自分ではないことにようやく気づき、動揺しながら廊下に出た。
廊下に出て、玄関を抜け、冷たい風が吹く外に出たところで、プラズマは立ち止まり、暗い顔をしている更夜に目を向け、口を開いた。
「なあ」
「なんだ……」
「ルナはあんたが大切にしている娘じゃないのか?」
「……そうだ。そうだったはずなんだ。どうかしているよな。ルナに抵抗なく手を上げられるようになってしまったなんて」
更夜は動揺していた。
プラズマは目を細めてから、空を仰いだ。空には冬の星座が輝いており、横には輝く月があった。
「ケジメをつけさせるために、ルナにお仕置きをしていたんだろ? 尻叩きですませてやろうとしたのか」
「そうだ。こんな責任じゃすまないことは知っている。俺は……」
更夜は肩を震わせると涙をこぼした。
「申し訳なく思っている。どうかしているよな。栄次が止めてくれなかったら、まずかったな」
「あんたは頑張ったよ。俺達がルナをもう少し気にかければ良かったのかもしれない。あの子は……時神を監視する時神なんだろ」
プラズマは夜空から視線を更夜に移す。
「そうらしい。あの子はわかっていないんだ。神であるということが」
「そのようだ。一度……わからせた方がいいかもしれない。こんなことをすると、どうなるのかを。子供のお仕置きじゃなく」
「プラズマ……いや、紅雷王(こうらいおう)。ルナを守ってくれ」
更夜がプラズマに頭を下げ、プラズマは静かに頷いた。
「とりあえず、今日は頭を冷やすんだ。明日の朝、ルナに責任をとらせるため、あんたを封印罰にする」
「わかった。お前に従う。俺は親の愛を知らないんだ。だから、あの子が何を求めているのか、わからない」
更夜はうつむきながら、サヨに連絡を入れる。プラズマはスマートフォンでの会話が終わってから再び更夜に言葉をかけた。
「更夜……一つだけ言う」
「なんだ」
目の前に弐の世界への扉が出現した。
「ルナは、ずっとうちの隣の家……サヨの家を見ていたらしいぞ。優しくしてもらっていたついこないだを、思い出して悲しくなったんじゃないかな」
「……そうかもな。俺は、必死すぎたのかもしれない」
更夜はプラズマにそう答えると、弐の世界へ帰っていった。
ルナの頬を冷やし、血を拭ってやったアヤはルナを寝かしつけていた。
ルナはアヤに背を向け、静かに泣いていたが、やがて泣きつかれたのかそのまま眠ってしまった。
アヤは和室の電気を消し、廊下に出る。
「アヤ、寝たか?」
栄次がアヤに声をかけ、アヤは小さく頷いた。
「ショックよね。わけがわからなかったと思うわ。育て親の更夜に初めて怖い顔で沢山叩かれて。ずっと泣いていたわよ」
アヤが答えた時、プラズマが二階から降りてきた。
「リカは部屋に寝かせてきたぜ。まだ、目を覚まさない。明日、目覚めるといいが……」
「なんか、リカが来てから状況がかなり変わるわね。あの子は沢山の秘密がありそうだけれど、リカ自体がわかっていないから、説明してくれない」
アヤは栄次とプラズマと共に、こたつがある和室に戻る。ルナを寝かせた隣の部屋だ。
「更夜の対応には正直戸惑ったよ、俺は」
プラズマがこたつに入り、横になる。
「ああ、俺達は更夜に任せすぎたのかもしれない」
栄次もこたつに入り、机の上の編みかごに入ったみかんをむく。
「もう、寒くなったわね。秋も終わりかしら」
「アヤ、あんた、なんか元気がないな。更夜の振るまいに驚いたのか?」
プラズマがそう尋ねた刹那、こたつ布団の中で、栄次がプラズマの足を軽く蹴った。
「な、なにすんだよ……」
「栄次、別にいいわ。隠してないから」
アヤが意味深な言葉を発し、プラズマは眉を寄せる。
「なんだよ……」
「栄次は私の過去をみたんでしょう?」
「ああ、すまない」
栄次はみかんを口に含みながらあやまった。
「だから……どうしたんだ?」
「ここで話すのもあれだけれど、私の小さい頃の話よ」
アヤはため息をつきながら、急須からお茶を入れ、話し始めた。
「話したくないなら話さなくていいけどな」
「隠すつもりもないから、話すわ。私はね、人間時代、『両親に全く似てなかった』の。弟がいたのだけれど、弟は両親に似ていたわ。産まれた時にね、私は『また赤ちゃんになっている』と思ったの。なぜだかはわからない。わからないけれど、『また、この姿なの?』って思ったの」
アヤはお茶を一口飲むと続けた。
「まあ、ここは今は関係ないんだけれど、両親に全く似てなかったから……かわいがってもらえなかった」
アヤはまたお茶を飲む。ゆのみを持つ手が震えていた。
「ルナを見て、思い出しちゃったのよね。よく顔を殴られていたこと」
「マジかよ……ひでぇな……」
「私の顔が気に入らなかったらしいわ。それはそうよね、似てないんだもの。全くね。髪から瞳から何もかも違う。顔を見せるなと言われて、食事も自分でこっそり作って夜中にひとりで食べてた。私もね、子供は好きなのだけれど、どうしたらいいのかわからないの。ひとりで育ったから。ずっと邪魔扱いされていたから、早い段階で家を出たのよ」
アヤはお茶を飲み干し、息を吐いた。
「私が怒っている男が苦手なのは、お父さんのせいなの。私の事でずっとお母さんと揉めていたわ。その後、決まって私を殴るのよ。髪の色が違うからと髪を引っ張られたり、切られたりもした。私が家を出たのは、本物の両親を探しにいきたかったのかも。ルナも優しい両親が気になったのかもしれないわね」
アヤは湯呑みの底を見ながら再び、ため息を漏らした。
「アヤ、大変だったんだな」
プラズマと栄次はなんとなくアヤの側に寄る。
「よく泣いていたから、頭ごなしに怒鳴られて怖いと思うと涙が勝手に出るの。追加で言うと、私は元々、全然違う名前だったのよ。アヤって名前は夢なのかなんなのかわからないけれど、優しく何回も呼んでもらった記憶があったから、自分でそう名乗っている。なんだか遠い記憶のような、懐かしくて、あたたかい感じがするの。なぜだかわからないのだけれどね」
アヤは立ち上がり、湯呑みを片付けに行く。
「なあ、栄次。栄次はいつから知ってたんだよ」
プラズマは小声で栄次に聞いた。
「……初めからだ。アヤの記憶は話より酷いぞ。見ない方が良い。ただ……彼女はずっと古くから記憶があるような気がするのだが、二十数年前ほどからしか見えない。不思議だ。お前が皇族で紅雷王だった時期などはしっかり見えるのだがな」
「『我は紅雷王。おかたさまの行く末も見えると言うに、おかたさまは我を使うのか』みたいな? しかし、アヤは謎だな……」
アヤが湯呑みを片付け、戻ってきた。
「それで、明日は……。ルナに酷いことはしないわよね?」
アヤは不安げにプラズマを仰ぐ。
「……酷いことをするよ」
プラズマの発言にアヤは悲しげに下を向いた。
「かわいそう」
「たぶんな、一番泣くと思う。更夜みたいな折檻はしないが、あの子から一番大事なものを奪う。アヤは辛かったらいなくてもいい」
プラズマはアヤの横に座り、背中を優しく撫でる。アヤは自身と重ねたのか、涙をこぼし始めた。
「あの子は更夜に愛されてたわ! あの子から更夜を奪うつもりなの?」
「その通りだ」
プラズマは言い訳を何もせずに一言だけ言った。
「ひどい……」
「今回は高天原に見つかったかもしれないんだ。たぶん、ずいぶん前から見つかっている。だからそろそろ俺は、高天原北の冷林から会議に出るよう言われる。明日、時神トップの俺がルナの責任者である更夜を罰し、ルナに罪を償わせ、高天原から追及されたら、更夜の封印で罪を償わせたことを言い、時の歪みは俺達が直したと報告する」
プラズマは髪をかき分け、みかんに手を伸ばす。
「アヤ。プラズマがやるしかないのだ。ルナを守らねば」
栄次もアヤの方に寄り、三人が一直線にこたつに入ることになった。間にアヤが挟まれる。
「男が両脇に来ると、なかなか狭いわね……。ええ、わかってるの。私も見届けるわ」
アヤがそうつぶやいた刹那、両脇からむいたみかんが差し出された。
「甘いぞ、食べるか?」
「すんげぇうまいみかんだから食べてみ?」
「……ありがと。いただきます。あなた達の優しさに……私はね、かなり救われているのよ」
アヤはみかんを二つ受け取り、控えめに一粒ずつ口に入れる。
「……えっと、しばらく、一緒にいてくれるかしら」
アヤは二人の片手をそれぞれ握り、うつむいた。
「いいよ」
「ああ、一緒にいる」
プラズマと栄次からの優しい返答を聞いたアヤは、嗚咽を漏らしながら静かに涙をこぼした。
翌朝、更夜は戸惑うサヨとスズにあやまり、無理に別れると、現世にある時神達の家の前に立った。
すぐにプラズマが迎えに出てきて、中へ案内される。
更夜は頭を下げると玄関で草履を脱ぎ、廊下を歩いて案内された部屋の一部屋に入った。
部屋の中に栄次、アヤが障子扉寄りに正座しており、畳の真ん中にルナが座らされていた。
ルナは不安げに更夜を見上げてから、苦笑いを向け、再び反抗を始める。
「おじいちゃん、なにしにきたの! ルナは許してないっ!」
「ルナ……いい加減にしなさい」
ルナの発言を聞いた更夜は鋭くルナに言い放った。
「ルナは時神の上なんだ! おじいちゃんなんか、だいっきらい!」
ルナは更夜を睨み付け、叫ぶ。
更夜はルナが何もわかっていないことにいらだち、再び叩こうとした。
「望月更夜」
プラズマに名を呼ばれ、更夜は慌てて手を引く。ルナの顔は昨夜の更夜の暴力により、赤く腫れたままだ。
「もうやめろ。それはもう折檻じゃない。あんたらしくないよ。子供をそんなに殴るな」
プラズマが珍しく真面目な顔で更夜を止め、更夜は眉を寄せ、悲しそうに自分の手を見る。
「更夜。アヤと栄次の近くに座れ。今からルナに責任をとらせる。望月ルナ、俺が許可するまで立つな。望月更夜を見る事も許さない。俺を見ろ」
プラズマの異様な雰囲気にルナは後退りをし、逃げようとし始めた。
「……望月ルナ。何をしている? 座れ」
「い、いやっ!」
ルナは泣きながら震える。
「時神の上に立っているのはお前じゃない。俺だ。お前が力を使ったせいで世界が歪んだ。時神をまとめている俺は歪んだ世界を許さない。お前が歪ませた世界を俺達が必死に直したんだ」
「知らない!」
ルナは走って逃げようとした。
「いいか、俺はお前が大好きな望月更夜も管理している。お前も当然、管理の対象になる。お前が俺達の上に立つ神だと言うなら、見せてみろ。お前の神力を。昨日リカにやったようにな!」
プラズマが神力を解放する。
髪が伸び、突き刺さるような力がルナを襲った。
「……っ!」
ルナも神力を出すがプラズマの力が強すぎて膝を折った。
気がつくと、栄次、アヤ、更夜までもがプラズマに平伏していた。
「こういうことだ。あまりやりたくないんだが。逃げるなよ。望月ルナ。お前の罪と向き合え。神力は最小限にとどめてやる。お前の気持ちを優先してやろう」
プラズマは神力を抑え、髪を短くした。先程、逃げようとしていたルナは冷や汗を拭いながら動けずに固まっている。
「さあ、どうする? 望月ルナ。素直になるんだ」
プラズマは優しくなり、ルナはプラズマを怯えたまま見上げた。
「あんたは……優しい女の子。更夜に甘えたかったんだな。あんたの気持ちが不安定だったから、半分くらい力が勝手に溢れていたんだ。ルナのおじいちゃんはルナが嘘ばかりつくから、信じられなくなっていたんだよ。ルナのことを嫌いになったわけじゃないんだ」
プラズマはルナに近づき、ルナを優しく抱きしめた。
ルナは目に涙を浮かべ、子供らしく嗚咽を漏らし始める。
プラズマはルナを撫で、静かに離れた。
「……そこに座れるか?」
「……うん」
プラズマの言葉にルナは恐ろしく素直に従った。
「望月ルナ、一つだけ言わせろ。お前、いつから更夜に優しくしてもらえてないんだ?」
プラズマに尋ねられ、ルナはゆっくり顔を上げた。
「ずっとだよ。力を間違えて使って、おしり叩かれてからずっと……おじいちゃんはルナに冷たい」
プラズマはルナの発言を聞きつつ、更夜を軽く見る。
更夜はルナを悲しげに見つめていた。
プラズマは目を閉じると、再びルナに視線を移す。
「そうか。ちゃんと答えられて偉かったぞ。これでようやく、話ができるな」
「……おはなし?」
ルナが話に興味を持ったのを確認したプラズマは雰囲気を元に戻し、叱る体勢に入った。
「大事な話をする。しっかり聞くんだ、望月ルナ。返事は『はい』だ。わかったか?」
「……はい」
ルナが素直に返事をしたので、プラズマは話を先に進める。
「望月ルナ、更夜に甘えたかったのは勝手だが、時神には禁忌がある。破るのはいけない。上が追及しにくるぞ、お前、どう責任を取る?」
「せ、せきにん?」
ルナは聞き慣れない言葉に震えた。
「そうだ。お前がどうしてこんなことをしたのかを、俺よりも上にいる神に説明し、『お前が世界をきれいに元に戻した』後、裁判にかけられて、上から言われた罰……お仕置きを受ける。おそらく、こんな感じになるだろう。お前が俺達の上に立っているなら、お前がひとりでこの責任をとるわけだ」
プラズマは淡々とわかりやすくルナに恐怖を植え付けていく。
「ま、待って! ルナ、世界を戻すやり方知らない!」
「ああ、そうだな。お前は何も知らないんだ。お前が時間をいじった後、どうなったか教えてやる。時間はずれ続け、生きるものの生死までも変えた。それがつながって、あちらこちらの運命が変わり、その者に関わった者の運命が変わった。それの繰り返しで被害は広がっている。それらの運命を一つずつ元に戻していくんだ。ああ、一つずつ、あちらこちら『同時』にな。じゃないと、被害は広がり続ける。元に戻るまで、気絶しようが、泣き叫ぼうが、血を吐こうが、神力を使い続け、一つ一つの運命を元に戻すんだ。人や動物、植物、物、空気、神……。お前はそれができるか?」
プラズマにそう尋ねられ、ルナは罪の重さを知る。
更夜に反抗するという、子供の気持ちでいてはいけないのだと、ルナは初めて気がついた。
取り返しのつかない事をしたのだと震えるしかできない。
「お前がやった、末路の一つの話をしようか。引っ越し屋さんを早送りしたな? あの後、どうなったと思う?」
プラズマに尋ねられ、ルナは震えながら下を向く。
「聞いているか? 返事ができないようだな」
「ひっ……わか、わかりません……」
「あの後、荷物は確かに早く積めた。人間の一人が踏まなくて良かった野花を踏み、花は死んだ。花はその後、種を残すはずだったが、残せなかった。それにより、細かな運命が変わる。まあ、ここは説明が長くなるから省くな。トラックは荷物を早く積めたことにより、早く発進した。それにより、何事もなく通りすぎるはずだった猫と時間がかぶり、ひかないようにブレーキをかけたら、後ろの車と事故。車の運転手は娘さんの結婚式に行く予定だった。軽い事故で済んだが、車が壊れ、結婚式も行けなくなる。トラックの方は中の積み荷のうち、持ち主の奥さんが大事にしていたお母さんの形見の食器が壊れ、落ち込み、旦那さんと仲が悪くなる。トラックの運転手は事故をおこしたことに落ち込み、引きこもりになり、さらにその人の親は悲しみにより精神が壊れてしまう。埋め合わせをした他の人間達にも影響が出て、忙しくなりすぎてイラついていた人間が問題をおこし、上司と喧嘩……その上司もおかしくなり……という風におこらない運命が起こるわけだ。後はひかれそうになった猫周辺、トラックの運転手の親周辺、結婚するはずだった娘さんの運命も細やかに変わる。もう手がつけられないなあ。これが引っ越し屋さんを早送りにした代償だ」
プラズマはこうなる前にルナの行動を未来見して対処をしていた。つまり、これはルナを放置した場合の、ある一つの未来だ。
「他に何したんだっけなあ? 虫を早送りしたり、時間を停止したり? どう元に戻すんだよ。俺に教えてくれよ、望月ルナ。どう責任をとるんだ? 早く教えろ。オイ、黙ってんじゃねぇよ。上の神はな、優しくはないぞ」
「……ごめんなさい」
プラズマの脅しにルナは大粒の涙をこぼし、小さくつぶやいた。
「ごめんなさい……責任はとれません」
ルナの言葉を聞いたプラズマは珍しく声を張り上げ、ルナを叱りつける。
「そうだ、お前は責任がとれない。お前の代わりに誰かが責任をとるんだ。俺達の誰かがお前の代わりになるんだから、謝罪し、責任がとれないことをしっかり言え! 望月ルナ!」
プラズマの突き刺すような声がルナを貫く。神力を言葉に乗せ、雨のように注ぐ術、古来の神が使う、言雨(ことさめ)である。
ついにルナは大泣きをしながら、プラズマにひれ伏すようにあやまり始めた。
「ごめんなさい! ルナはっ! ルナは『せきにん』がとれないです! 助けてくださいっ! ごめんなさいっ! ルナを助けて……」
ルナの、心からの謝罪が和室に響く。プラズマは小さな女の子を責めている事に心を痛めていた。
……わかってるよ。ルナ。
更夜が大好きだから反抗したかっただけだったんだろ?
子供に必要な感情だよ、それは。
ああ、女の子を震え上がらせて、こんなに泣かせて……。
この子はかわいい顔で笑う子なのに。
俺は……最低だよな。
これから本当に残酷な事をしなければならないんだから。
ああ、もう嫌だぜ。
更夜は鎖に絡まれながら時計の陣に引きずりこまれ、なぜか苦しそうに血を吐きながら消える。
そんな衝撃的な場面を見せられたルナは何にも言葉を発せられず、唇を震わせているだけだった。
「……あ……ああ」
ルナは涙をこぼしながら、放心状態になった。
「さて」
プラズマはため息混じりに立ち上がる。
「話は終わりだ」
プラズマがルナに背を向け、去ろうとした時、大泣きしたルナが必死にしがみついてきた。
「ごめんなさい! ごめんなさい! おじいちゃんを返して! 行かないでぇ! お願いします!」
プラズマは反応せず、下を向く。
「待ってください! 行かないでぇ!」
プラズマの手を引っ張り、わめきながらルナはプラズマを引き留めようとする。
「せきにんはルナがとります! ごめんなさい! 許してください! 行かないでぇ!」
プラズマは背を向けながら、唇をかみしめる。
プラズマは本来、こんなことができる男ではない。単純に辛かった。ルナの泣き顔をまっすぐ見ていられるのも、泣き声を聞くのも、限界だった。
ただ、おそらく、プラズマよりも優しい栄次、ルナに同情しているアヤのが辛いはずだ。
ふたりとも苦しいのを耐えているに違いない。
……嫌な役目だ……。
プラズマは心で小さくつぶやいた。
この子は俺達の上に立つには幼すぎる。高天原で責任を取るのは、俺になりそうだ。
「俺はこれから高天原へ行く。更夜を罰したことでこの件が終わったことを、冷林に報告しないとな」
プラズマがルナを優しく振り払い、栄次とアヤを見る。
二人は小さく頭を下げ、プラズマを送り出した。
障子扉を開けると、困惑しているリカがプラズマを見ていた。
「リカ、大丈夫か?」
プラズマはリカを心配しながら声をかける。
「は、はい……」
リカはプラズマの暗い顔を見て、咄嗟に道を開けた。
「リカ、栄次とアヤについていてくれ。ルナも頼む」
「……え、はい」
プラズマはリカの返事を聞くと、息を深く吐き、言った。
「高天原会議からルナを守ってくる」
「ぷ、プラズマさ……ん」
リカがプラズマの名を呼んだが、プラズマは振り返らずに玄関から外へと出ていった。
一方、ルナはプラズマが小さい声でリカと話していたことを聞いていた。
高天原会議とはなんなのか?
ルナは「せきにん」に関係する事だとすぐに気がつき、プラズマを追って走り出した。
「ルナ!」
アヤと栄次が突然走り出したルナを追いかけ、廊下へ出る。
「リカ! 大丈夫?」
アヤは廊下にいたリカに驚きつつも、リカを心配し、栄次はルナを捕まえた。
「ルナ、落ち着け。プラズマはお前を守っているのだ。高天原でプラズマが更夜の刑期を短くする交渉をするはずだ。えー……早く更夜がこちらに戻れるよう、頑張るということだ。お前は待て」
栄次がルナにわかりやすいように言葉をかける中、ルナは玄関を抜けた庭で白い翼の生えた謎の男達を見る。プラズマはその白い人達が持っていた、初めて見る謎の乗り物に乗り、消えた。
……あれは……なんだ?
ルナはほぼ無意識に「過去見」をし、プラズマの過去を覗き、あれが「鶴」という神の使いで、あの乗り物は「駕籠」というものらしいことを知る。
追加であれは「高天原」へ行くものであるという事も掴んだ。
ルナはすぐにプラズマを追うことにする。
「えいじ、ルナをひとりにさせてほしい」
ルナは栄次を見上げ、離してくれるように頼んだ。栄次はすぐにルナを離したが、ひとりにしてはくれなかった。
「更夜がいなくなって寂しいのだろう? 俺では更夜の代わりにはならんかも知れぬが……甘えてきても良いぞ……」
栄次が優しすぎるため、ルナは栄次に抱きついて甘えたくなったが、頭を振り、気持ちを落ち着かせる。
「おそとでお花、みたい」
「そ、そうか。なら俺も付き合うぞ?」
栄次はなかなかルナから離れない。
「お姉ちゃんとスズに説明するお約束だから、おうちに帰る……」
「ルナ、ならば俺も共に行くぞ」
栄次はルナを心配し、全くルナをひとりにしてくれない。
考えたルナは最終手段を試す。
「二階のアヤのお部屋で寝る」
「あ、アヤの部屋……えー……アヤ、ルナがアヤの部屋で寝たいそうだ」
栄次はルナが突然なぜこんなことを言い出したのかわからず、動揺しながらアヤにそう伝えた。
「あら、そう? なら私が連れていくわ」
アヤはルナを連れ、二階へと向かう。
「ルナ、大丈夫? 一緒に寝る?」
アヤは自室の部屋前まで来るとドアを開けた。ルナは素早くアヤの部屋に入ると、アヤを閉め出し、鍵をかけた。
「ちょっ……ルナ?」
アヤが不安げに声を上げる中、ルナはベッド横にある窓を全開にし、鶴を呼んだ。
鶴は驚くほどすぐに来た。
「よよい? やつがれはツルだよーい! 小さなお客様だよい?」
端正な顔立ちの、全体的に白黒の着物を着た男性が窓脇に駕籠を寄せる。
「えっと、高天原の会議まで連れてって!」
ルナは転がり込むように駕籠に入り込むと、鶴に命令した。
「はやくいって!」
駕籠内は電車のワンボックス席のようになっていたので、ルナはすぐに椅子に座り、鶴に叫ぶ。
「はやく!」
「よよい! 急行だよい!」
鶴はルナの言葉に従い、超高速で飛び去っていった。
「ちょっと、ルナ! 何してるの!?」
アヤは嫌な予感がし、階段を降りて玄関まで走る。栄次とリカが途中でアヤに気がつき、アヤを追った。
「どうした? アヤ」
「ルナが!」
三人が外に出ると、空高くに小さくなった鶴の姿が見えた。
プラズマが鶴に連れられている最中、未来見をした通り、高天原東の頭オモイカネ、東のワイズから高天原会議に出るよう連絡が来た。ただ、時神の上にいる高天原北の主、冷林からの連絡ではなかったのがプラズマの顔を曇らせる。
プラズマが連絡を受けた時にはもうすでに高天原東にたどり着いていた。
高天原東は最新技術を沢山使っているかなり高度な技術の国。
辺りは高いビルばかりだが、高天原なので神同様、幻想である。
神がデータであるというのを逆手にとり、神を数字に分解し、ワープ装置を作るなど頭の良い神が多い。
鶴は動く歩道の脇に着陸し、プラズマは鶴にお礼を言ってから駕籠から降りた。
目の前に金閣寺を悪い意味で進化させたような、金色の天守閣が見えてくる。ワイズの城である。
そのまま、動く歩道に乗り、城を目指した。
プラズマは天守閣に行く途中、未来見をし、会議の進みを確認する。
……ルナ?
なぜ、ルナが……。
プラズマの未来にルナが出てきた。ルナは置いてきたはずだ。
プラズマは辺りを見回す。
ルナの姿はない。
沢山ある未来の内の一つにルナが来る未来があるということか。
プラズマはなんとなく上空を仰ぐ。鶴がひく駕籠が三つ、通りすぎていった。
「今回は高天原東西南北か。霊的月、霊的太陽の姫は呼ばれてない」
プラズマは動く歩道から降りて、ワイズの金色の天守閣の前に立つと、自動ドアから中に入った。
一方ルナは鶴に「高天原の会議まで連れていってくれ」と言ったため、ワイズの城前でおろされず、高天原会議の会場となるワイズの城、三階の会議室まで鶴がだっこして運んでいた。
鶴は命令通りに動くのである。
城内部は金色ではなく、無機質な雰囲気だった。
鶴は廊下を歩き、装飾された扉の前でルナを下ろす。
「では、やつがれはいくよ~い! よよい」
鶴はルナに軽く手を振ると、笑顔で去っていった。
「あ、ありがとう……」
ルナはとりあえずお礼を言う。
鶴は丁寧にお辞儀をすると、エレベーターのドアを閉めた。
「よし!」
ルナはよくわかっていないまま、会議室の扉を開ける。
「くくく……お前が望月ルナかYO」
会議室に入った瞬間にルナと同じくらいの身長の少女に話しかけられた。
「う、うん……」
ルナは頷きながら異様な空気の会議室を眺める。
全体的に落ち着いた紅色の部屋で、お高そうな木の机に椅子が並べられていた。
そこに座っていたのは日本古代の髪型である角髪(みずら)の男性。
緑色の美しい長髪をしている、竜のツノの生えた男性、それから……青い人型のぬいぐるみ。
「望月ルナ。もう少しで紅雷王が来るから、そこに正座しといたら~?」
角髪の男性、高天原西の剣王、タケミカヅチ神が笑いながら床に正座するように言った。
「こうらい……おう?」
「お前らがプラズマと呼んでいる男だYO。さっさと平伏しろ、悪ガキ。私は東のワイズこと、オモイカネ。お前、何しにきたんだ?」
ワイズと名乗るサングラスをかけた謎の少女は、ルナに神力を向け、無理やり平伏の体勢をとらせる。
「ひっ……うう……」
失神しそうな神力を浴びせられ、ルナは冷や汗を大量に流しながら、神々に頭を下げさせられた。重たいものが背中に乗っているかのように、床から額を離せない。
「あやまりに来たのかYO? まさか、責任を取りに来たとか?」
「……っ!」
ワイズに言われ、ルナは目を見開いた。ワイズは神力を解き、ルナを解放する。
「さあ、何をしにきた?」
「ルナはせきにんを取りに来ました」
ルナの言葉を聞いたワイズは楽しそうに笑うと頷いた。
「そうかYO。なるほど。じゃあ、あいつが来るまでお前は床に正座していろ。元々『罪人』の座り方なんだからYO」
ワイズがそう言った刹那、扉がゆっくりと開き、プラズマが入ってきた。プラズマはルナを確認すると、眉を寄せる。
「呼び出しに応じました。私は時神未来神、湯瀬紅雷王でございます」
プラズマは丁寧に頭を下げた。
「さて、回りくどい話はめんどくさいんで、手っ取り早く聞く。なぜ、望月更夜を封印にした?」
ワイズに問われ、プラズマは鋭い眼差しを向けつつ、口を開く。
「その報告だ。望月ルナの代わりに指導者の望月更夜に罪を償わせた。だから、この話は解決している。望月ルナも反省し、世界は俺達時神が寝ずに元に戻した。俺は責任の有無ではなく、結果の報告に来ただけだ」
プラズマは神々にそう伝えた。
「その話じゃないんだよねぇ~」
剣王は不気味に笑いながら話の続きを聞いている。
「そう、その話じゃあない。なぜ、望月更夜を封印した? 罰を受けるのはクソガキの方だろうがYO」
ワイズは手に持った杖でルナを指す。
「違う! 責任の話をしにきたんじゃない! 冷林! なんとか言ってくれ!」
プラズマは自分よりも神力が下の上司、人型クッキーのような形をした高天原北の縁(えにしの)神
、冷林に意見を求めた。
しかし、冷林は何も言わなかった。
「ぬるいんじゃねーのかYO。なめられてんだYO。このガキ、ケツ叩きで躾られてんだろ? 百回ぶっ叩いて封印しときゃあいいんだYO」
ワイズは前触れもなく、ムチを振り上げ、ルナの頭に足を乗せると、平伏しているルナのお尻にムチを入れ始めた。
「ひっ……いっ、痛い!」
破裂音が響き、あまりの痛みにルナが泣き始める。
「オラオラ! ケツ上げろYO。最初からにすっぞ!」
「いたいっ! いたいっ!」
ルナが苦しそうにもがき、プラズマは慌てた。
「や、やめてくれ!」
「いたいっ! プラズマ! 助けてっ! いだい! ……あぐっ」
更夜がした子供のお仕置きとはケタ違いの痛み。これは罪人に行う鞭打ちだ。日本では江戸時代で行われていた重敲きの刑である。
「やめろ! 俺は責任の有無の話をしにきたんじゃねぇと言ったはずだが? 冷林! 何をしている! お前動かないつもりか?」
プラズマが怒りをあらわにし、神力を放出する。髪が伸び、ワイズの暴力を止めようと動いた。
「いたいっ! いたいよぅ! おじいちゃん、おじぃちゃぁん!」
ルナは泣き叫び、震えていた。
「やめろよ」
プラズマの制止はワイズには届かない。
「痛いだろ? 血まみれにしてやるYO。重敲きの刑ってのは死ぬやつもいるんだ」
ワイズは冷酷に笑いながらルナを鞭で打つ。
「やめろと言っている」
プラズマは乱暴にワイズの手を取った。
「お前がルナに罰を与えていいわけじゃねぇ。冷林が俺達の上司だ。お前は結果を聞く立場じゃねぇのか」
プラズマは激しく怒っていた。
「冷林には判断ができないんだYO。あの神は『子供』だからNE。だから判断は……お前よな。だが、望月ルナは我々にも迷惑をかけている。時神個神の問題じゃあないだろうYO」
ワイズは剣王を横目で見る。
「そうだねぇ……望月ルナが色々やったせいで、それがしの軍の、人間の歴史管理をしている神、流史記姫神(りゅうしきひめのかみ)と、神の歴史管理をしている、霊史直神(れいしなおのかみ)、ナオにシステムエラーが出て混乱したんだよ~」
剣王の言葉にプラズマは目を細めた。
「嘘をつくな。世界の修復は俺らがやった」
「違うさ、うちの神に影響が出たのはな、君ら時神の歴史部分だ。まわりが知らない記憶を持っているよね~? 『元に戻したという行動の歴史』を君達だけが持っている。それの処理に歴史神達が動いたのさ。君らは人間の皮をかぶって人間から産まれてくる神。歴史の矛盾がないか、人間の歴史管理をしている関係ない神まで時神の調べものに加わる形になったんだ」
剣王の言葉にプラズマは頭を抱えた。これはいちゃもんだ。
歴史神は一瞬で歴史の検索ができる。動くほど動いていないはずだ。
剣王も立ち上がり、ワイズから鞭を受け取る。
会話に参加しない高天原南のレジャー施設、竜宮オーナー天津彦根(あまつひこね)神はお茶を飲むと、瞑想を始めた。
「何をする気だ……」
プラズマがさらに神力を高め、剣王を睨み付ける。
「このお嬢ちゃん、百敲きの刑なんだろ? ワイズだと君に止められちゃうから、それがしがやろうと思ってねぇ」
剣王は震えながら泣いているルナに鞭を振り上げた。
「待てっ……!」
プラズマより遥かに神力が高い剣王は、プラズマをさっさと動けなくし、ルナに冷淡な笑顔を浮かべる。
「大丈夫さ、手加減するから~」
剣王は容赦なく鞭を振り下ろした。ワイズよりも力が強い剣王からの鞭打ちは痛みの度合いが始めから違った。
「ぎゃアア!」
ルナが叫び、服の上から血が滲む。
「ありゃ、やりすぎたか。手加減は難しいなあ~。とりあえず、残りは九十九回?」
「ひっ……ひぃっ」
拷問のような状況にプラズマは拳を握りしめ、ついに叫んだ。
「やめろっ! もうやめてくれ! どうすりゃあ、ルナが許される! 彼女をもう傷つけないでくれ……。更夜に傷つけられ、俺に傷つけられ、お前らにも傷つけられ……彼女はもうじゅうぶん……罪を償ったじゃないか……それなのに!」
プラズマは動けない中、必死に剣王を睨み付けるが、剣王は関係なく鞭を振り上げる。
プラズマは彼らがルナを交渉の道具として使っている事に気がついた。
……そういう事かよ……。
ルナの悲鳴が響き、今度は別の所から血が滲む。
……許せねぇ。
「責任を取るなら、どうすればいいかわかるかなあ~?」
剣王が再び鞭を振り上げる。
……こいつらは『俺の封印』を望んでいる。ルナに罰を与えるのなんてどうだっていいんだ。
罠にハマる形になるが……ルナを守るためには決めるしかない。
プラズマは息を吐き、目を閉じると、静かに口を開いた。
「ああ、わかった。……わかりました。私が代わりに……封印罰を受けます」
プラズマの発言に剣王とワイズは同時に含み笑いをし、ルナを鞭打つ手を止めた。
「なるほど、それは相応の罰だYO。時神の親玉が封印罰になるのが正しいな、確かに。望月ルナ、特別に許してやるYO。次は覚悟しておけ」
プラズマが封印される事を望んだ刹那、ワイズと剣王の態度が変わった。
ワイズはサングラスの奥にある金色の瞳を光らせ、口角を上げる。
……そうだ。こいつが消えれば、厄介な事を持ち込むリカを
消滅させられる……。