お母様とお姉様と私。Part 1

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こんにちは、こんばんは、もしくはおはようございます。作者です。第8章はいかがでした?心温まるエピソードだとコメントされ、とても嬉しいです。(≧∇≦) 私は冬休みに入りましたからいっぱい書けるといいです!さて、すみれと拓海の関係に衝撃が!第9章お楽しみください...

「なぁ、すみれ。」
「何よ、勉強してるってわかるでしょ?」
「あのさ、俺、すみれと結婚したい。」
朝からこいつは何を言いだしているのだ。拓海は四六時中私に付きまっている。生活の邪魔だ。彼氏でもないのに馴れ馴れしく、いい迷惑だ。
「はっ?何それ、酔ってるでしょ。」
隣に座る彼は当然、ぼんやりしていた。
「何も飲んでない。俺の単純な気持ちだ。」
バカじゃない?お互い恋愛対象として見てないのに何こいつ、また調子にのりやがってるな?
「そんなこと、あんたの本当の運命の彼女に言ってやりなさいよ。それに、私はあんたと一緒になることなど一度も望んでません。大体、今のあんたの存在が邪魔なのよ。あんたのせいで勉強に集中出来なくなったの。」
彼は唇を噛み、すぐに立ち上がった。私を冷たい目で見下ろし、こう言い残し去って行った。
「そうかよ。じゃあ、もう邪魔しねえよ。」
言い過ぎだったかもしれない。

「うーん。すみれは気が強い、素直だからね。言いたい事は言っちゃうからね。」
「何か悪いことしたかな。」
「私は女だからどれくらい傷付いたか分からないけど、結婚とか将来とかの事を話す男性は本気なのかもよ。だって、あんたら付き合ってるんだし。」
「だから、付き合ってないって。本当に。」
何度も何度も言い続けてることなのに。
「じゃあ、何なのあれは?」

「ストーカー行為?」

すると、気不味く奈央は私の目から視界を一気に逸らし、息を飲み込んだ。私が気に入らないものを打ち明ける時はいつもこうなる。
「拓海くん、すみれが好きなんじゃない?」
私の頭がこの一瞬真っ白になった。体全体が止まり、脳に何かの電波が流れ込みすぐに取り消された。嘘だ。
「あっ、あいつが?!絶対にない!あいつがどんな奴かわかる?!人を弄ぶ変態俺様魔王なんだよ!今でも私に付きまとってるのは何かを引き出す為だ!奴隷とかさせる計画とか!」
「あんた、百合みたいになってきた。でもそんな変態俺様魔王様も人を愛せないわけじゃないでしょ?」
「さあね。」
でもこの時の私は鈍く、本当の三浦拓海、いや拓海の素顔を見ていなかった。拓海は玉ねぎみたいに重ね合う層を何度も剥がしても奥に届かない。彼自体の本心や想い浮かべてることが全て謎で、何をしたいのかわからない。最初に出会った時の好印象はパズルのピースの一つ目。その後発見した俺様お調子者はまた一つ。その次に知った少し繊細な部分も他の一つ。でもそれが私を油断し、魔王様が現れた。そして、今のストーカー変態行為。それって、全体的に「男」という存在じゃない?男女の違いはこれね。

「やばい!ペンケース図書室に忘れた!ごめん、私今日は遊びに行けない!」
「いいよ。今度で。」百合は優しく言ってくれた。
「じゃあ!」
図書室に戻ると、窓の夕方の日差しが透き通り、暖かい春風と踊るカーテンに淡い赤とオレンジ色が染まった。運が良く、誰もペンケースを取ったり盗んだりしていなかった。鞄にしまい込んだ途端、ビビビッ!っとある携帯の着信音がぼんやりした私を起こした。気付いたら目の前に白いスマートホンがテーブルの上にガタガタと振動していた。電話に出るべきか?てか、出ちゃ駄目でしょ。誰が持ち主なのかもわからないんだし。いや、でも緊急事態だったらどうしよう。と、とりあえず出てみよう。(なんという行動だ。)
「もしもし?」
「やっと出た!拓海!あんた今日ご飯家で食べんの?!お母さん、今日あんたの好物の特製クリームシチュー作るって!」とある年上っぽい女性の声が怒鳴り始めた。拓海...ってこれ拓海の携帯なの?じゃあ、ま、いっか。
「あの、拓海さんは今居ませんけど。」
「はぁ?あんた誰?拓海とどういう関係?」えっ、どういう... 確かにどういう関係なんだろう。ストーカーと被害者?いや、現実的に怖いよ。知り合い?でも知り合いじゃ、こんな普通に電話なんて出ないし。ゆ、友人?友人で行こう。
「あの、大学の同級生、いや、友人の黒木すみれと申します。拓海さん、携帯をお忘れなったみたいで、私は大学に居るんですけど...」
「あっ!よかった!変な人じゃなくて!ごめんなさいね、あのバカ弟が。あなた、拓海が何処にいるか心当たりない?」
「残念ながら今朝以来は見かけませんでした。」
「そう。じゃあ、家まで届けてくれないかしら?」
「あの、無礼かもしれませんが、あなたは...」
「怪しい者ではないわ。私は拓海の姉の茜です。」
「お、お姉様!」
「ははは!あっ、でも今拓海はアパートにいないから!私が帰ってるからしばらく実家に泊まってるのよ。住所わかるかしら?」
「いえ。」
「じゃあ、メールで送るわ。ちょっと待って。」
切られた。ふぅー。
ピピピッ!
メール。
メールの最初の文章は全て住所が丁寧に有り、あとはこんな様になっていた。
「弟がバカでごめんなさい!おまけにあなたに家まで届けるのに迷惑かけちゃって。後でお仕置きをしてやるわ!

姉の茜 ^_−☆」

大学をすぐに出て行き先へと向かった。天気が段々暗く移り変わり、月と真っ暗な空が舞い上がって来た。
「この道路を左... それで... 角のすぐ側?」
グーグルマップの道案内に案内されながら辿り着いた家はとてもファンシーだった!可愛らしいデザイン!赤い屋根とか、うわっ!可愛いモチーフの門!お庭も綺麗!植物が結構元気に育ってる!私はキョロキョロと三浦家の自宅を見た。いかんいかん!渡さないと!
ピンポーン。
白いクラシックなデザインのモザイクのフロントドアが一気に開き、二人の女性が現れた。一人は背の高くスタイル抜群なかっこいい二十代後半の美人。もう一人は私くらいの身長の綺麗な五十代くらいの優しいオーラを持った女性。
二人同時に門の前に向かって来た。なんだこの無駄な緊張感は。
「すみれさん?」さっきの電話と同じ声をする背の高い方の女性、おそらくお姉さんが言った。
「はい!あの...これ。」鞄から白いスマートホンを私は慌てて取り出し、彼女に差し出し、彼女は受け取った。
「迷惑かけてごめんなさい。ありがとうね。」
「いえいえ。」
突然、二人から変な視線を感じた。私を良く観察していた。ジロジロと。より緊張感が溢れ、頭の中が動揺している。緊張の汗が流れてる。やばい。どうしよう、笑顔が苦笑いに変わってるよ。観察中十秒くらいに二人はお互いに目を合わせ、唇の左右がニヤと上がった。
「すみれさん、もしよければ夕飯食べてこない?」とお母さんの方が訪ねた。
「いえいえ!いいですよ!」
「でもこんな時間にお腹空いてない?まっ、携帯を届けてくれたお礼としてさ。」茜さんが私を説得しようとする。
「対したことじゃないですし...」
「あの子、携帯がないと生きられないんだから。命の恩人なのよ、すみれさんは!いいじゃない!あの子の代わりに食べて!」
遠慮したいな... でもこのお姉さん、説得力強いし、断ったらこの会話が永遠に続きそう。まあ、最初から完全に断ったら厄介になりそうだな。
「じゃあ、今夜くらいは。」
「はいはい!いらっしゃい!」

家の中も私の好みのものばかり。アンテークな雑貨や芸術品。それに拓海と茜さんの子供の頃の写真が可愛い!でも、この少年、見覚えがあるな。てか、待て、家族写真の下には拓海の幼稚園の写真がある!この制服、どっかで... てか、隣に居る子も見覚えあるな... とても近い存在な気がする... 毎日会っているような顔。うーん。

私じゃん!
えっ、う、嘘でしょ。う、嘘だ。み、み、み、見なかったことにしよう。

本当の君はまだ知らない。Tempat cerita menjadi hidup. Temukan sekarang