ヴァイオレット 〜美しき君への唄〜

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皆様、アップデートに遅れ申し訳ありません。でも拓海はもっと恋する乙男(おとめ)です。

Enjoy!

❤︎

ピンポーン。
一番嫌な時に客が来やがった。
もう、誰だよ... 今料理してんのにさ。夕食になるところだったフライパンの中にあるパスタを置き去りにした。玄関のドアを開けると珍しくもな連中が揃っていた。
「遊びに来ましたー!」
「何しに来たんだよ。」パスタが... 心配だ。
「いやなぁ、今頃晩飯作ってるかなぁって思ってさ!ん?何か作ってるなぁ!」智が部屋の匂いを勝手に嗅いだ。
「ナポリタンだが、何か。」俺はムカついていた。こいつらタイミング悪すぎなんだよ。
「久しぶりに飲もうぜ。ほら、遠慮すんな。」孝也がワインのボトルを見せた。はぁ... 俺は目を回した。
「入れ。」
「やったー!」
子供かよ。下品だな、靴そろえろよ。
俺はすぐに調理に戻った。
「孝也は奈央ちゃんと最近どうなんだ?うまくいってる?」
「うん... それがちょっとな。ケンカというか、ちょっと怒らせちゃったみたいで。」
「えっ、以外!孝也が人を怒らせるなんて。」
「奈央が少し不安定な感じで結構怒りん坊だったから『今あの時期なのか。』と聞いたら『あんたデリカシー無いわね。』って切られてさ。」
「そりゃ言っちゃダメだな。」
なるほど。言うことに注意せねば。
「てか、飯ー!」智、この野郎。
「お前らが勝手に来やがったんだろうが!!」ブチ切れた。
「もしかして拓海もそんな時期なのか?ホルモンって怖ぇ...」
「男に移るわけねえだろ。つーか、お前ら何しに来た。」
「いや、ちょっとお知らせがあってさ。」孝也が何故かいつもより嬉しそうな表情を浮かべた。一体何なんだ。
「俺、一星の審査員に立候補されたんだ。」
一星... 一星とは毎年行われる、まあ、NHKで放送されてる「のど自慢」みたいな大会であるが、全国の人が参加できる。去年は俺が審査員として勤めた。優勝者は大手芸能事務所から多くのオファーが来る。俺たち、Silver Stainがこの番組でメジャーデビューできた。だから、俺たちが審査員を勤めることはかなりありがたいものだ。大したもんだ。
「良かったじゃねえか。」
「うん。ありがとう。」
今になって考えるとそろそろすみれも良いだろう。そうだ!すみれを一星に参加さればいいんだ!それで優勝させて、要約俺たちと同じ業界に立てる。夢を叶えられる。その提案をメンバーに打ち明けた。答えは全部ポジティブだ。
「拓海、マジ恋してんな!」智がからかった。せっかく飯をテーブルへと持ち運んでいたのだその言葉で止められた。嬉しいのか恥ずかしいのかわからない。
「な、何言ってるんだよ...」
「だーってさ、彼女の夢をこんなに応援してるし、こんなに幸せを願ってるだろ。あーあ!羨ましいなあ〜!俺も恋したい!」
「...」何も言えない。

***
食事を終えた後、ワインのボトルを開けた。2008年からのワインだ。テレビをつけ、9時の孝也の最新の二時間恋愛ドラマを見た。熱血な主人公を演じた本人は部屋の隅で固まっていたが、俺たちは結構真剣に見ていた。かなり面白かった。最終回であり、孝也が演じた熱血なファッションデザイン企業の社長が彼より実績を持った相武紗季が演じる女性社員の絵美里と社長の席を争うのだが、途中で二人は恋に落ちる。
最終回では二人は社内に知らさせずにひっそりと家族しかいない結婚式をあげた。何故こんなに詳しいのか?仲間の努力は見てやりたいから、毎週見てるんだ。男だからっていって、何の問題もないだろう。
「俺、お前のドラマ初めて見た... 凄えな。」智がテレビをじっと見ながら言った。
「いい結末だな。」
「緊張したんだぞ!相武さんと一緒に共演するの!」
「はあ... 結婚か... 」智がこんなこと言い出すなんて意外。俺はあいつを変な奴みたいに見つめた。
「俺たちまだ21か22だぞ。そんなことまだ考えなくてもいいじゃないか。」京介が野菜ジュースを吸って突っ込んだ。
「でもな、夫婦とか俺ちょっと憧れてて。」
「ふーん。」
「百合さんとかは?」俺の個人的な意見だ。百合さん、智が好きなのがバレバレだからな。
「百合ちゃんね... 確かに可愛いけど。どうかな?もっとアタックして欲しいな。」
なんだこいつ。結構サディスティックな面もあるんだよな。忘れてた。
「それって百合さんに期待しているってこと」
「嫌だなぁ、京ちゃん!俺は別にしてないよ。ただ好きなのバレてるからどこまでやれるのかなぁ〜って。」
「女の子にプレッシャー与えんなよ。」
「はは!そうだよな。」

急に孝也がテレビの前に戻って来た。相変わらず体操座りのままだが。
「そういえば、すみれちゃんとはどうなんだよん!」
「どうって、別に何も。」
「んなわけねえだろ!ちょっと喜んでるんだろ!顔に書いてあるぞ。」
うわあ、なんだこのプレッシャー。本当にいい事とか無かったし、逆に悪いのかもしれない。
「お兄さんに会った... それだけだ。」
シーン。
な、なんだ。
「それって良くね?」孝也がまた喋った。
どこがいいんだよ、あんな口で話すんだぞ。俺、完全に嫌われたし。
「良くねえよ。悪影響だと思われてる。」
「何それ、まさかそのお兄さん、シスコンだからって妹を凶暴な元女たらしのお前から守ろうとしてるって感じ?!マジうける!!」智が赤い顔をしながら爆笑した。ああ、こいつ酔ったな。てか、智何杯飲んでやがるんだ?さっきは二杯目くらいだから、俺より飲んだな。
「そうみたいだな。」俺はグラスに残ったワインをごっくんと飲み込んだ。酒の苦さが喉の中を引きずった。
男の恋話(コイバナ)って案外変だな。このメンバーではあまりしないから不自然に感じるのかもしれない。よく仕事の話や新曲とかライブとか(それ全部仕事か)。

少し酔っ払ってたのかもしれないが、あの黒い皮のソファーに以前すみれが居た時、彼女がギターを弾いていた光景が浮かび上がった。その瞬間、思いついた。

彼女へ曲を描こう。

三人が帰った直後に食器を洗い、ギターを取り出した。久しぶりだな、エリザベス。エリザベスをソファーに休ませて机から最新のソングブックと鉛筆を取り出し、リビングルームへ戻った。もう既にアイデアが頭の中に浮かんでいて、いい気持ちだった。今夜で全部書けそう。絶対にアコースティックな曲にする。
新しいページを開き、ページの一番目のタイトル用のバーにこう書き込んだ。

ヴァイオレット。

君の笑顔。
君の唇。
君の手。
君の声。
君の瞳。
君のぬくもり。

君への唄。

本当の君はまだ知らない。Onde histórias criam vida. Descubra agora