家族愛

339 8 3
                                    

こんにちは、作者のblueです。アップデート遅くなり、すいません。ですが、今回は他の章より、心の中が癒される章だと思われたいです。つい最近、まだ学生の私は信じられない夢をみました。なんと、私が妊娠していたんです。変と思いますけど、悪くない体験でした。心が温められ優しいお母さんになる妊婦さんの気持ちがわかりました。夢なので確実ではありませんが、その夢を参考にしてこの第8章を書きました。お楽しみ下さい。
***
完璧だ。

何言ってるんだ、俺は。あの時の俺はどうかしていた。何故彼女にキスなんてしたんだ?頭の中は「そういう雰囲気だったから」とかまた馬鹿馬鹿しい言い訳を作っている。しかし、人間の本当の気持ちや意見は心の中から来るものだ。今までこの物語を読んできた貴方、俺の本心はすみれが思ってる冷たい厄介な奴じゃないんだ(俺自身はそう思うが)。信じられないか?じゃあ、証明してやる。
実は結構自分の行動を時々後悔しているんだ。浮気関係とか、自分の印象を悪くさせる事とか。
なんでだろう。なんで俺は素直になれないんだろう。
今日は姉の茜がフランスから帰国する日だ。実家に帰って来ると連絡が来たので、俺も一旦帰ることにした。姉貴はジュエリーデザイナーで世界中で店を入れてる。俺も買ってるほどの良質だ。こうして家族で実家で夕食を食べるのだ。実家は世田谷区の奥の静かな住宅地で、実は今住んでいる渋谷より好きだ。
「久しぶりだな。」俺は実家の前に立ち、家に話しかけた。相変わらず母の趣味のガーデニングは明らかに見せられ、新しい花や植物を手に入れたのだろう。屋根は淡い赤色で、あとは白。花壇が大きいことに近所の子供と一緒に遊んでた頃を思い出した。家の黒い鉄の門を開けて、玄関前に立った。
ピンポーン。
「はい!」
出て来たのは黄色のチェックのエプロンと同じ黄色のゴムの手袋を着けていた。
「拓海...」
「ただいま、母さん。」
「おかえりなさい。さっき茜が帰って来たわ。部屋に居ると思うわ。」

早速懐かしい細長い廊下を渉たり、何も変わりないアンティークの家具や白い壁に飾られてる家族や小学生の頃の友人の写真が包囲した。奥の和室にたどり着いた時、父と妹にご挨拶をした。手と手のシワを合わせて、五年ぶりの挨拶をした。あまり感情的になりたくないが、父は俺の中学の卒業式、俺のデビューと同時に父がガンで亡くなった。まぁ、それは置いといて。

階段を上がると、茜と俺の幼少期の写真ばかり。

トントン。

「茜?いるか?」
「拓海?」
ドアの反対側から飛び出して来た姉はいつも俺にキスする。流石に大人になってからは辞めて欲しい。まあ、愛の国のフランスじゃ、普通だろうな。
「ボンジュールタクミ!久しぶりね!あらっ、もう益々かっこよくなってるわ!」
「五十代のババァかよ。」
「失礼ね!私はまだ新鮮で若い27歳よ!ほらほら、さあ入って!」
姉が高校の頃使っていた部屋はまるで時間が止まったような空気だった。本棚には大学受験のための参考書やフランス語の辞典が相変わらず置かれたまま。ピンク色のぬいぐるみもベッドの上にヒョコっと座っていて、俺のポスターも17歳の頃から止まっている。あれは三回目の全国ツアーで、武道館で初めてライブをした時だ。懐かしい。
「ねえ、大学生活はどう?」
「まあまあ。上手くいてる。」
「ん?成績は?まさか、以外と駄目だったりして。女の子と遊びまくってるからでしょ。」
「グッ、別に。トップじゃないが、いい方だと思う。」
「そう。で?今は誰と付き合ってるの?確か、3つ年上の清子ちゃんだっけ?」
「そんなの特訓い四年前に終わってる。俺のことまだそう思ってるのか?」
「はっ?そうじゃないの?辞めたの?」
「多分。」
「多分って...」
「...」
「えっ?マジラブ?」
「なっ?!」
「そうなのね。どんなの子なの?」
「そうじゃねえって!」
「顔に書いてあるわよ。気になる子がいるんでしょ?」
「別に!」
「ふむふむ。大学の子か...」
「なんで決めつけるんだ?!」
「決めつけてないわよ。そう書いてあるもの。」
「...」
その夜はこの話題をチャラにしてもらった。姉はパリでの生活や仕事のことを語り、おまけにフランス人の写真家の彼氏のことも自慢していた。元の家族に戻れた気分がやたら幸せだった。母さんもニコニコしていて安心した。
食事を終えた時、姉は思い掛けない事を言い出した。散々元気にしていたが。
「お母さん、拓海。私、ニコラスと結婚する前に...実は...」
「何?言いなさい。」
「...私、赤ちゃんがお腹に居るみたい。」
「...」
「...」
「へっ?マジ。」俺が尋ねた。妊娠しているのに一人で日本に来てるなんて。
「うん。」
「いつから。」
「まだ一ヶ月だけど。」
「茜...」
母さんの目には嬉し涙がポツポツと溢れていた。俺はただただ驚き、心の中でもとてもいい気持ちが湧いていた。茜が子供を産むんだ。茜はかなりこの告白をするために覚悟を決めていたみたいだった。母さんはこの数年間以外と寂しかったみたいだった。父さんも病気で亡くなっていて、妹の千春も小学生の時に事故で亡くなり、俺と茜は家を出ていて仕事で帰る時間は無く、母さんはこの家を一人で守ってきた。でも孫が産まれると知ってからは家族が増えて嬉しいと微笑んでくれた。俺だってこれ以上愛してる人は失いたくない。
新しい家族。
「お母さんが怒ると思った。だってまだ結婚もしてないのに、勝手に妊娠しちゃって。」
「関係ないわ。式なんて早速やればいいじゃない!私はあなたのために嬉しいわ!拓海もよね?」
「もちろんだ。なんて言う名前にするんだ?」
「ニコラスと私は日本の名前にしたいわ。今はとりあえず春香って名付けたいな。」
「春香か... いいな。」
この夜は嬉しい発表ばかりだ。明日みんなに報告しなければ。すみれにも。
俺は実家にしばらく泊まることにした(姉がいる間は)。

高校の頃の俺の部屋のベッドはより小さく、寝心地が悪いが、攻めて夢良かった。十年後、いや、五年後くらいで、俺は今のアパートを出ていて新しい木の壁と床がいっぱいある家に居た。まるでもう生活感が既にあるようで、キッチンには洗われた食器、窓の外には乾く洗濯物、棚の中や上には小さなサボテン、バジルやミントなどの植物が飾ってあり、アルバムや名作の小説が並んでいた。爽やかなデザイン。夢の中と言っても、実際は俺がもう既にこの家に住んでいたように動いている。
「あら、おはよう、拓海。」ん?誰だ?まさか、俺、この家の住人?時間は?あぁ、朝の五時半。む?時計の隣にはある写真がフレームに飾られていた。それは少し年をとった俺と待て、すみれ?俺は少し髭が生えていて(おしゃれな感じで)新郎のようなタキシードをキッチリ着こなし、真顔で立ち、俺の側には純白のレースのウエディングドレスと髪を上げて微笑むすみれが座っていた。写真の下に、日付があった。2021.3.10。
七年後、俺はすみれと結婚している。
後ろを見ると、木の階段からゆっくりと進むすみれがこっちへ降りて来た。よく見たらやたら太っていた。いや、腹だけが。はっ?て事は、妊娠。茜が妊娠してるからこんな夢を見るのか?
「おはよう。」俺が返事した。彼女は目覚めたばかりでかなり体がダルそうに一歩一歩歩いていた。
「四時半くらいに赤ちゃんが動いたの。朝早いのに元気なの。」
彼女がそっとソファーに座りかけた。俺も付いて行き、隣に座った。幸せそうな笑顔をしている彼女を俺はじっと眺めた。
「はあー。もう七ヶ月。大分大っきくなったね。」彼女は自分のお腹を撫で、言いかけた。今この母性溢れる愛情に俺は惚れ込んでしまった。認める。この夢の中のすみれは見たこともないすみれだった。俺はそっと彼女のお腹に右手を出し、触れた。暖かい。まるで人間、いや、赤ちゃんの体温を感じているみたいだ。恥ずかしいが、本心はとても喜んでいた待ち遠しく、「お前に早く会いたい。俺たちの子供に早く会いたい。」と願っていた。状況によってはいいだろう、夫婦だからいい。

温もり溢れるディープなモーニングキスを彼女に捧げた。

本当の君はまだ知らない。Where stories live. Discover now