青春時代/恋病

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『Sorrow/Love』(哀しみ/愛)
八月の一週間目になり、すみれに会っていない間に四曲も書き、一週間前に事務所に出版してもらい、本日このミニアルバムのジャケット用の撮影日だ。俺たちのバンドは他と少し違い、俺というヴォーカリストをバンドのジャケットの顔にはしない。さすがにずるいからな。Silver Stainは世間には「イケメンぞろいのロックバンド」と言われてるからな。何でも四人でやるのだ(なんでもじゃないけど、バンドで一緒にやるものなら一緒なんだ)。子供っぽいとは言われるが、俺たちは小さい頃からダチだから関係を崩したくないから。
今回のミニアルバムのテーマは愛の哀しみ。情けないが、俺のすみれに対しての想いを描いた曲も入っている。なので、少し悲しげなセットだ。真っ暗で、四人で左右一本線で立つ。俺は右から三番目、左から二番目の順だ。端っこに立つ智と京介はドラマチックな風に真っ直ぐカメラ目線ではなく、智は右端だから右を向き、京介は左端だから左を向くという感じに一致された。カメラマンはとにかく「真剣な表情で」とわかりにくく説明し(いや、全然説明にもなってないな)、一様自分の思った通りにやり、案外気に入られたようだった。
俺たちが2009年から所属している芸能事務所、「スポットライト・プロダクションズ」は日本でも最も有数な様々な人を所属する事務所だ。もちろん、俺たちみたいなアーティスト、俳優、モデル、子役、声優、キャスター、アナウンサー、タレントなどなど居る。この事務所に所属してたった五年だが、結構長く感じた。前も言ったように、俺たちのメジャーデビュー出来た理由は一星大会。だが、本格的にパフォーマーと俺たちを育てたのはこの事務所の養成所。それに、俺は全然講座には付いて行けず、結構な苦労をした。歌う技術や基礎は身につくけていたが、中学の頃人見知りだった俺はトーク術がなかった。自己PR(プロデュース)が下手で、よくどもることがあった。口数が少ないと講師に怒られたな。その時出会ったのは森山さんだった。彼は当時彼の事務所では研修生で、彼が練習相手になってくれた。やっぱ最初から説明したほうが早いか。俺たち、Silver Stainの始まり。

三人の中で一番付き合いが長いのは孝也だ。小学五年生に同じサッカーチームで会い、俺は小さい時から音楽に興味津々だった。俺はQUEENが大好きだった。そして仲良くなった孝也とよくクラスの端っこで二人でQUEENを聴きはしゃいでいた(変人に見えたらしいが)。そして、同じ中学一年の時に、俺は京介と智に会った。ドラムを始めた京介とギターを長く習っていた智は遊びでバンドを組んでいた。最初はバカバカしいと思っていた。思った以上に智は歌が下手だったんだ。まさにアオト・オブ・チューンだった。それに、本当にバンドを始めたのは女にモテる為だとさ。そして孝也は智の影響でギターを始め、俺は彼らの練習をよく見に行った。それで俺はやっと納得した、「仲間に入りたい」と。早速俺は両親に頼み、ヴォーカルレッスンを申し込んで、本格的に歌う事を決心して、人見知りだった俺は少しずつ孝也、智と京介以外の友達も増え、女子にもモテる様になり、成績も上がるようになり、やっぱり音楽やってて良かったんだ。四人は中学校の中では「銀の汚れ」と呼ばれる様になった。何もない、いつもバカしていた子供が輝ける分野を見つけたと、当時の先輩や教師たちは俺たちをそう描写していた。そんな名前でも評判は悪くなかったがな。最初は楽しいから音楽やっていたが、仕事になった時は中学二年の六月、音楽の教師に声をかけられた。彼はこう言った。
「君たち良く放課後バンドの練習しているだろう?」
「はい。そうですけど。」
「なかなかの物だな。まだ若いのにアドバイザーか顧問もいないなんて。」
「まあ、正式に部活じゃないですし。」
「そうか、そうか。まだ君たちには早い思うとが、金稼いでみないか?」
「俺たちが。」
「そうだ。君たちのバンドだ。僕の兄はね、小さなライブハウスに働いてんだ。僕から話してみてるから、来週一回くらい演奏してみないか?」
当時は俺の頭の中は夢と希望の想像しかできなかった。俺たちにこんな機会が回ってくるとは思いもしなかった。三人にも絶対に言いたくないほど興奮していた。職業になってしまうとは。だが、その毎週水曜日午後6時から7時までの公演は家族に不満を与えていた。知らない大人たちに演奏を観られ、心配をされしていた。その事も気にせずに俺たちはバイトを続けたが、その教師の兄にグッと一気に黙れた。あの小さなステージに立って三ヶ月が立ち、危機が来た。
9月の夜にいつも通りライブハウスに行ったら、突然知らない四人の大人たちが俺たちを止めたのだ。何も暴力的な行動はしていないが、とても悲しかった。彼らがいきなり日にちが水曜に変わったからここから出ろと。それに、実は高1未満の学生は出入りを禁じられていたのだった。俺たちは素直に出て行った。契約も解除され、俺たちはステージに乗ることが出来なかった。中学生だったからこそ、まだ若過ぎると他のライブハウスにも言われ断れた。残酷だった。長い時期(まあ、悲しい日々は長く感じるだろう)、歌う機会が無く、辛かった。その時、俺は初めて作詞に手を出した。姉ちゃんも留学し、父も亡くなり、その辛い想いをして来た中学時代を終え、やっと高校に入学し、また大きな機械が回ってきた。それが「一星大会」。

「休憩でーす。」
はあ、疲れた。コーヒーでも飲もうかと自分に云いドリンクバーに向かい、コーヒーメーカーを準備した。今日は序でに百合さんも遊びに来ている(もちろん、智の為に)。
「おっ、クラスガールか。」ん?
「はい!今月号が出たんですよ。それに、このページ見てください。」... 「ほら!」
「あれ、すみれちゃん?何ですみれちゃんが居るんだ?」すみれ?無視無視。すぐに駆けつけたら気になってるようになってしまう(気になるけど)。「おい!拓海!ちょっとこっち来いよ。」グッ、呼ばれた...仕方がなく俺は二人の所へ行った。雑誌の中をそっと百合さんの肩から覗いた。
「すみれちゃんだよ!これ!」
「わ、わかってるって...」
何これ... すみれがモデル始めるって本当だったんだ... かっけえ... 好きな女がかっこよくていいか?ずるいぞ、カッコつけないといけない奴は俺なのに... 恥ずい...
「おい、大丈夫かよ...」
「何が。」
「いや、顔が...」!あまりの恥ずかしさで顔を隠した。欲しいよ... めちゃくちゃ欲しい!攻めてギターを持ちながらポーズしてるページ一枚だけでも雑誌から剥がしたい... 勇気がない、いや、俺のプライドが許さない。男としてなんか変態に見られる...
「うん... じゃあ、あげよっか?」
「えっ?!」
「どうせ欲しいんでしょ〜?すみれにベタ惚れの拓海く〜ん!」
ああ!忘れてた... この前にみんなの前で告白したんだった... この人も... 一番ややこしい人が。
「貰っとけよ。店で自分で買いに行くよりマシだろ?マスコミにもセーフだし、お前自身、自分に恥をかかさない奴だからな。」
智... この二人は邪悪だ... もう既に彼らの下心溢れる笑みが怖い... ゴクッ。欲しいな。でも、プライドが... でも。でも。でも。でも...
シャッカッ!
「あっ。」
「も、貰う。」
「素直になった。」
「すみれちゃんのことになると可愛いね〜❤︎」
からかうなよ... もう... やだな...

家に帰るともう変態になりやがった。でも、良いんだ。俺は雑誌からすみれだけ写ってる三ページを綺麗に千切り、マンションの奥のスタジオルームの鏡の黒いカーテンの後ろに顔が届く場所に三枚を貼った。うん、コレクションにしよう。俺はすぐに百合さんに電話に頼んだ。
「もしもし?あれ〜?拓海くんから連絡するなんて珍しいね。」
「遅くにすいません、ちょっと頼みたいことがありまして...」
「私はあんたの上司か?もう、同い年なんだし、友達なんだし、もう拓海くんは荒れてた子だってわかるし普通に話して良いよ。」
「ご、ごめん。ついクセで。あの雑誌、読んでるんでしょ?」
「?ああ、うん。すみれが載るって知ってもっと読むようになったよ。それが何か?」
「毎月出たら、俺にも一冊買ってくれないかな。」
「まあ、いいけど。毎晩見て女神様に祈るの?ヒューヒューロミオ様!ジュリエットう喜ぶよ〜。」
さすがにそこまではいかねえよ... 百合さんの想像力は凄えな(色んな意味で)。

結局約束をした。

ああ、俺、マジおかしくなってる... 恋病だ。

本当の君はまだ知らない。Kde žijí příběhy. Začni objevovat