拓海の気持ち

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人...いっぱい居るな。

話し合ってる人も居れば練習をしている人も居れば私みたいにひっそりと座って待っている人も居る。オーディション現場はやっぱり緊張するなぁ。手に抱えた自分のオーディション番号の髪が緊張の汗で溶けそう。足もムズムズしてきたし。この待合室は100、100人以上は居るかもしれない。人くらいで埋まってる。凄い、孝也さんたちはこんな人数を1日で審査するんだ。苦労だな。休憩とかあるのかな。綺麗な人がいっぱい来てる。私は深呼吸の練習をしよう。何もしてない様にすると真剣にオーディションする気がないと思われる。あっ、読者さんにどんな状況を説明するのを忘れてたわ。私は一星大会の第2オーディションの現場にいます。書類審査を無事受かった人たちは実際の審査員さんたちにパフォーマンス力と大会に参加する人をもっと知るために私たちはここに来ている。私の番号は59番。さっきまでは50番の人が呼ばれた。もうすぐだなぁ。ああああ!!!拓海、助けて!!「緊張するな。孝也がいるから大丈夫だ。」って無表情な顔でアドバイスされても全然わからないよ!!一層の事、もう...ダメダメ!せっかくここまで来れたのに諦めちゃダメ!!!!

ふぅー。落ち着け、すみれ。自分の曲は自分の得意な英語力を試された曲だ。そう。誰かへの曲。拓海へ送る曲...あああ!!!!!!拓海の事考えちゃうと混乱しちゃう!今は集中しなきゃいけないのに!!!Okay, okay....吸って...吐いて...吸って...吐いて...大丈夫。大丈夫。ここまで頑張ってきたんだ。審査員に気に入られないと意味がない!ちゃんと緊張感が無い自信家な女は評判良くなる。えっと、曲はオーディションのバンドさんたちがやってくれるから。大体、90から120秒はそう長くない!ルールは破ってないし、あとは...えっと、歌詞を読み直そう。

All I knew this morning I woke(今朝起きたら)

Is I know something now, know something now,(何かを知った、何かを知った)

I didn't before.(以前は知らなかった)

And all I've seen since 18 hours ago,(18時間前から見えたのは)

Those green eyes, your freckles and your smile,(その緑の瞳、そばかすとあなたの笑顔)

In the back of my mind making me feel like...(私の心にこんな気持ち)

うん、そしてコーラスで...本当はデゥエットだけど、ブリッジはハモーニーする相手はいないからメインメロディーで。

Come back and tell me why(戻って来て教えて)

I'm feeling like I've missed you all this time(ずっと君が恋しかった理由を)

And meet me there tonight(今夜あの場所で会おう)

And let me know that it's not all in my mind (そして私の考えだけじゃないって言って)

I just wanna know you better,(君をもっと良く知りたい)

Know you better, know you better I...(もっと知りたい、もっと知りたい)

I just wanna know you, know you, know you...(君をもっと良く知りたい、君を、君を...)

とても大好きな歌と歌手の二人、テイラースウィフトとエドシーランの曲、「Everything Has Changed」(全てが変わってしまった)。純情な子供の様な小さな恋を描いた心温まる二人の素敵な優れた歌声を重ねたラブソング。はあ...いつかデビューしたらこんな曲を拓海と一緒に歌いたいなぁ。って、何言ってるんだ?!付き合ってもいないのにそんなの受け入れてくれるわけ...あるか...な?わからない。曲の歌詞を作る事は拓海の仕事だもん。私が頼んだら簡単に私のため仕事を引き受けるわけがないじゃん。拓海は自分の仕事は自分でやるもん。私のわがままは聞かないだろうな。この曲のメロディーと歌詞は確かに頭と胸に染み込んだ。はず!不安はない!

「52番!」あああ!!!近づいてきた!お腹の中が変だよ!蝶々が羽ばたいてる!These goddamn tummy butterflies!!!いつも緊張すると少しずつ酷く擽ったくなる!!えっと、怖がってちびる前に、トイレ行こう。

はい、はい。すみませんね。

はあ...少しは楽になった...

手を洗って鏡に写る自分の顔を見た。頬が赤いなぁ。唾も何度も飲み込んでる。えっと...鞄ごと持ってきたのかよ、私は。今日はかなりカジュアルなスキーニージーンズ。メイクポーチっと。渇いた唇は透けた薄いピンクだった。ううん。強いって見せなきゃ!そう。今日はティラースウィフトを歌うんだ。彼女になりきりみたいに強くて魅力的な女性にならなきゃ。ティラーはあまり歳も離れてないんだ。彼女には...追いつかないけど、成り切るつもりで!!テイラースウィフトと言えば...赤!!!赤いマットの口紅を唇に塗りつけ、髪も少しバサバサにして。アイライナーも少しウィングを描いて...ふぅ!!よし、行くぞ。私はロッカーになるんだ!日本のテイラースウィフト、目指すぞ!!...あれ?何今の...私ったら、変だ。

本当の君はまだ知らない。Where stories live. Discover now