ゴクッ。私は自分の唾を飲み込んだ。ききき...来てしまった!!まあ、ちゃんとした服...というかまあちょっとおしゃれして来たけど...ビルデカ!!このビル、オフィスビルはおよそ7階建て。凄い...事務所の仕事ってこんなにあるんだ...最上階と6階の間に「スポットライトプロダクション」と堂々と銀の文字で飾られている。
「ここが俺たちの事務所だ。...って、おまえガッチガチだぞ...」
「だだだだだって...!」
「落ち着けよ。社長、そんなに怖い人じゃないし。」
「そういう問題じゃ...!」
「アタフタしてると一生入れないぞー」
「あっ、うん!」拓海は余裕で両手をポケットに入れながら開く自動ドアを通り、私も後を追った。事務所と言いつつ、対しことないと言うが、ここは本当の株式会社。就職活動とかする時はこんな感じな場所ばかりへ行くのかな...?ま、もし社長さんに気に入られたら就職活動なんてしなくても良いんだけど。二台のガラスエレベーターが上下働いてる。中には立派なスーツを着た方々が乗っている。拓海はエレベーターの上ボタンを押し、スーツの方々がニコリと目を合わしてくれた。私と拓海は軽く頭を下げてエレベーターの中に足を踏み入れた。ここも一様ビジネスビルなんだよね。
「社長の部屋、最上階だから。」えっ?!もう行くの!?
「もう会いに行くの?!他の人にご挨拶とかしなの?」
「他に用ねえし。」
「で、でもさ...??」エレベーターが動き出した。
「こんな機会滅多にないぞ。社長自ら推薦したんだぞ。社長に気に入られるのが第一目的だからな。」頑張んなきゃ。って、そんな風に言われたら社長さんって結構厳しい人なのかな...
「社長さんってどんな人なの?」
「うん...そうだな。普通のオッサンだ。」
「普通のオッサン?」
「ああ、50代半ばで良い人だ。」
「そ、そうなの??」
「うん、まあ、結構女好きで。」
「...」本当に気を付けなきゃ。
芸能事務所というもの、殆ど普通の企業会社に見えてくしゃぶりそうな私の気を落ち着かせてくれた。ここは仕事現場で、拓海も仕事がある日は前は毎日通っていた場所だ。私もいい加減堅苦しい職場の雰囲気に慣れなきゃ。
社長室は大きなフレームを囲んだ立派な両方から開くドアが出迎えた。目に入った瞬間、心臓が止まってしまった。あまりにも堂々としていたドアなので、余程社長がそのドアを表していたように見え、私も背筋を伸ばして髪をまとめた。よっし!
「良いか、並べ区話すなよ。」とドアを開ける隙に拓海が呟いた。その言葉の意味は完全に把握していない状態でとりあえず従う事に決めた。「失礼します。三浦拓海です。」
社長室はやはり煌びやかだった。天井からぶら下がるシャンデリアとピカピカな皮ソファーが輝いた。部屋の隅から隅まで掃除されていて、書類、フォルダー、事務所所属タレントの写真集など、部屋左右に並ぶ本棚にきっちりと整理されていた。とてもまともそうな方なのだろう。こんなに綺麗にして。
「おっ、三浦君か。久しぶりだね。」社長室の奥にある個室から初耳の声が私の目を動かせた。低く、とても誠実な男性の声だった。社長は灰色に淡いピンクのストライプネクタイを着用し、コーヒーと菓子を乗せたシルバーのトレーを手に持っていた。薄く白髪が生えた男らしい髭にふわりとした白髪が黒髪と混じり合わせた様なアメリカ人らしいおじさんだった。目が合って私は真顔でお辞儀をした。「もしかして...君が?」
「あっ、黒木すみれです!!昨夜は見に来てくださってありがとうございます!!!」ああわわわ!!やっぱ緊張する!!すると、トンと軽く痛くい程度に拓海の拳で頭を打たれた。
「慌て過ぎ。」彼に注意された。そこで本当に先輩らしい私の彼氏の真面目な横顔を見上げた。子供っぽかったはずの彼がちゃんとしてる。なんか不思議。
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本当の君はまだ知らない。
Romance大学生のすみれは高校時代からずっとSilver Stainというイケメンぞろいの人気ロックバンドのヴォーカリストとリードギターの三浦拓海に憧れ、大学で音楽を勉強して、いつか自分がシンガーソングライターになって一緒の舞台で共演したいという夢がある。 しかし、実際に直接会った日には想像ができない、日本中の女性がいつか恋した王子様の本心がすみれに明らかになる。