Seductive Smoker

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プルプルプル...

「あっ、もしもし?あっ、こんないきなりすいません。」
「ど、何方ですか?」
私は強撃にプレイしていたプレーステーション4の「コール・オブ・ヂューティー」を中断した。
「あっ、あの以前お会いした森山です。」
「も、森山さん?!」
な、なんでこの人が私の携帯番号を知っているんだ!?教えた覚えはないのに。
「は、はい。あの、ちょっと変な話なんですけど。」
「はあ。」
「うちのKarenの出版社に今月の写真を提出した際にパートナー会社の他のファッション誌のディレクターさんが訪れていたらしくて、なんか結構黒木さんを気に入ったみたいなんですよ。」
えっ、どういうこと?私の写真なんていつ...
「えっ、いつ私を撮ったんですか?」
「あっ!あの、すいません。俺が無意識に... 人生で一度会った人は必ず写真に残したい趣味で。別に許可無しで雑誌に載せるつもりではありませんから。」
「はあ... それならいいですけど。」
「その一枚がディレクターさんの目に入って、あなたに一度お会いしてみたいとおっしゃっていて。週末は空いていますか?」
「ええ、大丈夫ですけど。」
「ふぅー!よかったー!あっ、行き先は俺が案内するので付いていきます。」
「はぁ... わかりました。」
「じゃあ、また電話します。」
切れちゃった。カタカタと階段から彩奈の足跡が聴こえた。やはり彼女だった。濡れた髪にタオルを首に巻いててパジャマに着替えていたから風呂上がりなのだろう。
「話聞いちゃった。」私がと目を合わせずに冷蔵庫へと方向を向けた。
「あっ、そう。」
冷蔵庫の扉を開けて、二本のヤクルトを持ち私の隣に座り込んだ。飲み物を私に差し出して会話が続いた。
「スカウトされるって言ったでしょ。」
「はっ?」
「だから、モデルにスカウトされたの。森山さん、色々難しく説明しちゃう癖があるの。でもよかったじゃん、クラスガールの読者モデルとか。読者さんももっといるし。」
「ふぅん。」
確かクラスガールっていう雑誌、百合がよく持ち歩いているやつか。あまり気にしなかった事が結構私に大きな影響を受ける事なのだ。

その土曜、昨夜また森山さんから電話をもらい、もっと詳しい情報を得た。私は朝の八時頃に出発し、約束通り新宿駅の西口へ行った、ああ、森山さんはもう既に着いていた。
「おはようございます。」
「おっ、おはようございます。早速ですが、オーディション現場に向かうのですけど、ご準備はよろしいですか?」
「えっ、オーディション?聞いてませんよ!そんなこと!」
「まぁ、オーディションを受けるのは黒木さんだけだし、面接とかだけですよ。途中から入って来るから周りの子たちにはちょっと警戒しててくださいね!」
「はぁ...」
西口からおよそ15分で着く現場だった。スタジオといえ、今回私が行くのは二階の特別のオフィスルームだった。部屋へと森山さんに案内され、入った瞬間別れた。面接官が来るまでお待ち下さいと。
「お待たせしました。」
「あっ、いえ。」
審査員らしきの方達二人ドアから現れた。三十代前半くらいのメガネをかけた男性と彼と同じ年くらいの女性が入って来た。二人は私の反対側の椅子に腰掛け、手元に持っていた書類やバインダーを机に置いた。ふぅ... 緊張してきた。ちょっと油断しちゃったかも。
「では、始めましょうか。」女性の方が面接を始めた。最初はちゃんと自己紹介し、もっと深い話に移った。

「黒木さんはハーフだと聞きましたが、本当ですか?」
「ええ、母がイギリス人で父が日本人です。」
「なるほど。」男性の方がメモ帳に書き込んでいた。このパターンでは質問者は女性の方か。
「先日うちのディレクターが妹さんの雑誌の出版社に伺ったらしいですね。まさにスカウトされたという意味ですが、黒木さんはモデル、いや、芸能関係の職業には興味はありますか?」
歌手を目指してることを打ち明けていいのかな。でも正直に言わないと。これに受かれば少しでも夢に近付けれる!
「はい、歌手にはとても深い興味があります!」
「ほう、これは初めてですね。」彼女はケラケラ笑った。何故かバカにされた気がし少しムカついた。

***

無事面接は終わり、疲れた。ややこしい質問とか訊かれるし、例えば「モデルには興味はありますか?」とか、私をモデルを中心に質問してきて、もっと個人的な事とか訊かないしモデルの話だけ。私はそんなにモデル業界のこと知らないし!

「お疲れ様。」
「森山さん...」
オフィスから出て十歩くらい進んだら彼が待っていてくれた。やはり森山さんは大人の男性だなぁ。拓海がこんな感じになってくれればいいのに。(あれ?なんで拓海となんかに比べてるんだ?)
「これから予定とかありますか?」
私は左腕の手首にある銀色の腕時計を時間を確かめると、針は12時3分を指していた。予定... ダディー(お父さん)がシンガポールの出張かえあ帰って来るから、今夜は家族で家でご飯食べるよね。まだ大丈夫。
「いえ、夕方までは。」
「よかったお茶でもしませんか?緊張でお疲れでしょう。」
「あはは、お恥ずかしいです。いいですよ、ちょっとお腹空いているし。」
「そうですか。あっ、黒木さんは甘い物とか好きですか?俺、渋谷にあるいい店知ってるんです。」
「はい。じゃあ、行きましょう。」
年上だけど、森山さん、信用できそう。いや、年上だからって信用できないと言う訳ではなく、心配性のお兄様がいつも男には注意しろと警告するから(笑)。

新宿駅から山手線に乗って渋谷区へと向かった。彼が言っていたその例の喫茶店は渋谷109のすぐ近く。渋谷か近くで撮影がある時はそこで食事を取っていると言っていた。
実際に行ってみたら、やっぱり大人っぽいクラッシーなお店だ。三階建てで、一階の入口を開けると、喫茶店よりバーに見えた。入ってすぐに目に入ったのは会計の隣にあった冷たいケーキやスイーツのショーケース。様々なケーキが並んでいた中、レアチーズケーキが目にパッと目立った。これを注文することに決めた。見惚れていた間、森山さんはもう既にバーのカウンターの席に座っていた。やばいやばい。私はすぐに隣に座った。
「本日は何にしますか?」バーのマスターが訪ねた。
「うーん、今日はなぁ... 新作のクリームバジルパスタ。黒木さんは?」おそらくさっき渡されたメニューを見ながら注文した。
「あの、レアチーズケーキで。」
「畏まりました。お飲み物は?雄二さんはいつものメイカーズでよろしいですか?」
「何言ってるだよ、鉄ちゃん!昼から酒飲むわけねえだろ。」笑いながら森山さんは言った。
「おや?雄二さんがいつもそうなさってませんか。」マスターは面白いな。思わずクスッと笑ってしまった。
「うるせっ!ブラックコーヒー!」
「はいはい。あなたは?」
あっ、私だ。えっと、あっ... 森山さんの手がメニューをそっと差し出してくれた。あぁ、まただ。心臓が妙なことをしている。Shut up (黙ってよ).
「じゃあ、ジンジャーエールで。」
「はい。少々お待ちください。」マスターは厨房へと姿を消して行った。数秒後、森山さんの手はジーンズのポケットの中に入り何かを取り出した。タバコのパケットとプラスチックのライター。森山さん、吸うんだ。
「あっ、吸ってもいい?」
「えっ、どうぞ。」
... なんか子供扱いされた気がする。ちょっとイラついちゃった。なんで?あれ?普段なら別に気にしないのに。
彼は紙の包みを唇の咥えてライターをつけて先っぽを燃やした。
フーハー。
... ついつい見てしまう。私はジロジロ見つめていてよく森山さんを見た。はぁ... なんかこの魅惑的な雰囲気... 少しパーマされた髪、大人びいた体と肌。こういう時の鋭い目付き、シャツの巻かれた襟が見える男らしい筋肉が目立つ腕...

私の理想の男性だ。
「この人を絶対に私の虜にさせたい。」私は心に決めた。

[作者の私も想像しながらも結構ドキドキしちゃました!(≧∇≦)]

本当の君はまだ知らない。Donde viven las historias. Descúbrelo ahora