「冬はやっぱ冷えるなぁ。」俺は車の助手席のドアを開けてすみれに入らせた。無事面会は終わり、俺はすみれを家にすぐに帰すことにした。すみれも疲れてるだろうし、今日はゆっくり休ませた方が体調に良い。
俺は薄暗い昼の空を見上げた。雨か雪が降りそうかもしれないと俺は予想した。うち...暖房かけ忘れたな。帰ったらすぐにつけよう。自分を運転席に着席させた直後、すみれは準備万端に姿勢を正して、シートベルトを引いて着用した。
「じゃっ、行くか。」
「うん。」エンジンを踏み入れて俺はハンドルを回して事務所の少し混んだ駐車場を潜り出た。東京の街はやはりクリスマス季節に備えてライティングや飾りにどの建物もキラキラとしていた。そうか、クリスマスか。今年は...すみれと過ごしたいなぁ。
あっ。
何言ってるんだおまえ、クリスマスと言ったら...一日中仕事入ってるじゃねえか!その現実に気付いてしまった自分が今本当恨めしい!!そうだった...!丸二日朝から仕事に予定が埋まってるじゃないか!イヴも当日...てかバンド全員じゃねえかよ、多忙なのは孝也と智だが、俺も充分あるな。
イヴの日からは...
・音楽雑誌の取材と撮影
・正月テーマのビールのCM
・俺たちの曲が主題歌に使われた少年アニメのライブイベントの午後の部の顔出し
・夕方には他バンドのヴォーカリストと女性ラジオの収録
・夜からは智と孝也とバラエティーの生放送クリスマス当日からは...
・朝の番組の小顔出し
・横浜のクリスマスライブ
・事務所での打ち合わせクリスマス午後から空いているが、流石に普通ならイヴで祝うよな。まあ実際すみれと二人きりじゃなくて良いから、何かはやりたい。
「こ、今年はクリスマスとか...予定あんのか。」
「う、うん...多分奈央達と一緒にやるかも。」
「そっか。」ですよね...やっぱ女子でやるよな。良いなぁ、逆に俺達全員仕事だし。芸能人には休日は滅多にねえからな(俺が復帰したらまた忙しくなるし)。
「拓海は?」...
「ま、まあ...一様芸能人だし?予定はないこともないが...」おいおい、素直にスケジュールがぎっしり詰まってると言えばいいじゃないか!後で何か期待させちゃ、嘘ついたことになるだろうが!彼氏失格になるぞ!!「いや、実は一日中忙しくて。ごめんな。」
「う、ううん!謝ることないよ。」何故か今の発言に妙な違和感を感じた。少し震えるようで、高めな声だった。俺は動揺した。都合悪いな。
「そ、そうか...」知らずにいたくないなぁ、すみれの本心。
***
すみれを家に送った後のことだった。運転中に百合から緊急着信がきた。いや、最初は3回着信がきたんだ。だが、運転中だからその3回は無視して、段々しつこくなってきた6回目は携帯に繋げた車のシステムで電話に出た。
「たくっ、運転中だ。何だよ、しつこいな。」俺は実にムカついていた。美術科の百合さんは想像力豊かじゃなかったのかよ(まあ、状況によっては)。
「んもう、堅いなぁー。」
「でっ、要件は。」
「あっ、今みんな揃ってあんたんちに居るんだけど。」はあ?!?俺んち?!なんでぇ?!?
「誰が俺んちに招いたんだよ。てめえら部屋に侵入したりしてねえだろうな。」
「いや、鍵の持ち主はあんただしね。ドアの前で待ってるよ。今どの辺?」
「さっきすみれを家に帰したところだったんだ。だから後20分くらい。」
「ええー?寒い冬だというのに〜」
「一様廊下にいんだろ。」
「うん、まあ。」
「なら凍えて死ぬわけねえだろ。後少し待て、並べ区早く行くから。」俺は電話を切ってさっさと向かった。ったく、何なんだよ、俺の...
友達は。
あれ?いつの間にか、俺、あいつらのこと友達認定している...もう人見知りな自分はもういないんだな。
すみれのお陰だ。
***
「てめえら!!何しに来やがった?!」
「うわわ!!拓海君怖いなー!!すみれとの僅かな大切な時間を潰してごめんなさーい!」百合...おまえ、わざとじゃねえだろうな。俺はムカついて百合の頬を掴んでやった。ああ、そうだよ!大切な時間を潰されて腹が立ってんだよ?!悪いか?!「痛いよー!」
「ああそうだよ!恋人と時間を過ごして悪いか?!」
「えっ...恋人?」奈央が顔を傾けて不思議そうに言った。あっ...そういえば一度も言ってねえな。
「ええ?!」
「な、なんだよ!!」
「いやいや...」智が苦笑いをしていた。「まあ、そろそろだろうとは思ってたけど。」
「そ、そんなに予想外だったか...」何か一瞬認められてない気がし、不安になった。
「逆に当然の展開というか...?」えっ?俺はそれを顔に出した。智はケラケラ笑いながら言った。「こっちではバレバレだったんだよなぁ。おまえら鈍すぎ!」
「鈍っ...」
「まあまあ、良いじゃないか!今日は大事な話をしに来たんだよ。」と孝也が言った。
突然の客に俺は慌てて部屋を整理した。元々は綺麗だが、暖房や茶淹れなど。本当に、攻めて12時間前に連絡でも入れてくれればもっと快適に招いてやったのに。清楚な奈央と岡本さんは何度もお構いなくと口にしてリビングルームの床に自分達で座布団を探して正座をしていたが、逆にここに通い慣れた野郎共は自分の家の様に寛ぎ始めた。この態度も慣れたもんだが、攻めて彼女の前や狙ってる女の前ではちゃんとしろよ。みっともねえな。まっ、京介は昔から教育されてる様に背筋良く正座をしてるが...
「でぇ、要件は?」俺はコーヒーを持ちながら尋ねた。
「あっ、そうだね。実はね、クリスマスイブはすみれの誕生日なんだよ。」百合がつぶやいた。ん...?
えっ。
はぁ?!?俺はそんな大事な日にちを知らなかったというのか?!?俺は初めて自分に絶望を受けた。脳味噌がその一瞬で爆発したように、頭が真っ白に染まった。半年以上彼女を知っていて一度もこんな大事な日を耳にしなかったなんて...おいおい、酷すぎるだろ。
「それで、サプライズパーティーを計画するつもりだけど。拓海、絶対参加するよね。」
「そ、そりゃあもちろん...」俺は一秒も考えずに応えを吐き出してしまった。
すると、孝也は印刻してないように首を振った。「拓海は馬鹿か。クリスマスの前後、当日!空いてるわけがないだろ!」俺は孝也に間違いを指されてまたプライドに傷がついた。っち、そんなのわかってるに決まってるだろ!!クリスマスイヴにライブがあるし...
「そんで、俺たちはイヴライブがありますと先ほど説明しました!そこでね...ちょっと捏ねを使ってちょいとしたアレンジをしてみようと思って...」そこで、俺は思いもつかなかった着想を智は暴露した。
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本当の君はまだ知らない。
Romantik大学生のすみれは高校時代からずっとSilver Stainというイケメンぞろいの人気ロックバンドのヴォーカリストとリードギターの三浦拓海に憧れ、大学で音楽を勉強して、いつか自分がシンガーソングライターになって一緒の舞台で共演したいという夢がある。 しかし、実際に直接会った日には想像ができない、日本中の女性がいつか恋した王子様の本心がすみれに明らかになる。