ジェーン夫人の店を出ると、キャンディはアニーが用意した馬車で、アニーと共にポニーの家に向かった。
道すがらアニーは、アーチーがアードレー家の事業により一層時間を費やしていて、ジャズに興味を持ち始めたと、キャンディに語った。
キャンディは、いつになく静かだった。
「......何かあったの?キャンディ」
アニーが、訊いた。
無表情のキャンディ。
「......アニー、......わたし......」
キャンディは、声を喉につまらせた。
キャンディを心配そうに見るアニー。
「......今日、......テリィに会ったの......」
キャンディの声は不安に満ちていた。
アニーは、聞き間違えたのかと思った。
「......テリィに会ったって?どうやって?......何を言っているの!?」
「......テリィが数週間前に、手紙をくれたの。......返事を出さなかったら、テリィがここに来たの」
アニーは、驚いて手を口にあてた。
「そんな!それで、テリィはどれくらいここにいるの!?」
「......わからないわ。昨日、ポニーの家にわたしを探しに来たの。今日、テリィに会いに行って......婚約したと伝えたわ......。でも、テリィを拒絶出来るのかと、訊ねられた時に、......わたし......言えなかった......」
キャンディは今にも泣き出しそうだった。
「......キャンディ!どうするつもりなの?」
アニーはキャンディを気遣い、キャンディの腕に手をあてた。
「......わからないわ......」
二人共黙り込んでしまった。
沈黙が包み込む。
不意にキャンディが言った。
「
ジェーン夫人は、......とても幸せそうだったわ」
残りの帰り道では、これ以上語られることは何もなかった。
ただ、馬の蹄の音だけが、鳴り響いていた。