第4場回想アーチーとアニーを訪問

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「......キャンディ、君は時々本当に、救いようがないよなぁ......」
アーチーは、キャンディに告げた。
「どうして君はいつも気づかないのかなぁ。君に好意を寄せる奴にさ」

キャンディは、肩を竦めて笑った。

「アーロン、......彼はいい奴だよ」
アーチーはそう言いながら、アリステアの事を考えていた。

『キャンディはきっとアンソニーを忘れることはないと思うよ。それでも、苦しみは遠のく......。ぼくたちに......できないことが、あいつには......キザ貴族にはできるんだ』*2

あの時、兄貴はそう云った。


もし、僕達が出来ない事を──アーロンが、出来るならば......。

「......もし、幸せが君に訪れるなら......キャンディ......わかるだろう?......兄貴は、君に幸せになって欲しかったんだ」

「アーチー、......ありがとう」
キャンディは、そう言うとアーチーを感謝いっぱいの瞳で見た。

ちょうどその時、アニーがお茶とビスケットをトレイに乗せて、応接室に戻って来た。アニーは、アーチーとキャンディが、親密そうに話をしていたのを見てしまった。

遠い昔だったら、こんな場面はアニーを苦しめた。今ではもう、温かさと余裕さえ感じられていた。

アニーは、アーチーとキャンディが、ステアとアンソニーとの強い繋がりを共有しているのを知っている。

そのステアも、アンソニーも、もういない。

アーチーとキャンディだけが、共通の思い出を持ち、二人を失った悲しみを分かち合えるのだ。

「そうだよ、彼にチャンスを与えてやれよ、キャンディ」
アーチーは笑うと、ウィンクした。

******

コーンウェル家訪問後日のことだった。

「そうね、......試してみても、いいわ」
弱々しく優しい声で、俯いたままキャンディが言った。

アーロンの顔は、キャンディの言葉で明るくなった。

「もし、あなたが辛抱強くわたしを......待っていてくれるのなら......」
キャンディは、そう言うと顔を上げた。

二人の目が合った。

キャンディには、自分自身の気持ちがよく分からなかった。

アーロンとは気が合ったし、一緒にいると、いつも幸せだった。

でも、キャンディはアニーやアーチーやパティやアルバートさんと一緒にいても、幸せだった。


「......君の好きなようにしていいんだよ、キャンディ」
アーロンはキャンディの手を取りほほ笑むのだった。

──少しの間、アーロンの優しい表情は、アンソニーを思い出させた。

( ......わたしは、また......誰かを愛せるのかしら......? )
キャンディは思うのだった。



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参考資料
*2
名木田恵子著
小説キャンディキャンディファイナルストーリー下巻
祥伝社 2010年11月10日 発行
104頁

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now