「......キャンディ、君は時々本当に、救いようがないよなぁ......」
アーチーは、キャンディに告げた。
「どうして君はいつも気づかないのかなぁ。君に好意を寄せる奴にさ」キャンディは、肩を竦めて笑った。
「アーロン、......彼はいい奴だよ」
アーチーはそう言いながら、アリステアの事を考えていた。『キャンディはきっとアンソニーを忘れることはないと思うよ。それでも、苦しみは遠のく......。ぼくたちに......できないことが、あいつには......キザ貴族にはできるんだ』*2
あの時、兄貴はそう云った。
もし、僕達が出来ない事を──アーロンが、出来るならば......。「......もし、幸せが君に訪れるなら......キャンディ......わかるだろう?......兄貴は、君に幸せになって欲しかったんだ」
「アーチー、......ありがとう」
キャンディは、そう言うとアーチーを感謝いっぱいの瞳で見た。ちょうどその時、アニーがお茶とビスケットをトレイに乗せて、応接室に戻って来た。アニーは、アーチーとキャンディが、親密そうに話をしていたのを見てしまった。
遠い昔だったら、こんな場面はアニーを苦しめた。今ではもう、温かさと余裕さえ感じられていた。
アニーは、アーチーとキャンディが、ステアとアンソニーとの強い繋がりを共有しているのを知っている。
そのステアも、アンソニーも、もういない。
アーチーとキャンディだけが、共通の思い出を持ち、二人を失った悲しみを分かち合えるのだ。
「そうだよ、彼にチャンスを与えてやれよ、キャンディ」
アーチーは笑うと、ウィンクした。******
コーンウェル家訪問後日のことだった。
「そうね、......試してみても、いいわ」
弱々しく優しい声で、俯いたままキャンディが言った。アーロンの顔は、キャンディの言葉で明るくなった。
「もし、あなたが辛抱強くわたしを......待っていてくれるのなら......」
キャンディは、そう言うと顔を上げた。二人の目が合った。
キャンディには、自分自身の気持ちがよく分からなかった。
アーロンとは気が合ったし、一緒にいると、いつも幸せだった。
でも、キャンディはアニーやアーチーやパティやアルバートさんと一緒にいても、幸せだった。
「......君の好きなようにしていいんだよ、キャンディ」
アーロンはキャンディの手を取りほほ笑むのだった。──少しの間、アーロンの優しい表情は、アンソニーを思い出させた。
( ......わたしは、また......誰かを愛せるのかしら......? )
キャンディは思うのだった。********************************
参考資料
*2
名木田恵子著
小説キャンディキャンディファイナルストーリー下巻
祥伝社 2010年11月10日 発行
104頁
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The One I Love Belongs to Somebody Else 〜それでも君を愛してる〜 By Alexa Kang
Fanfiction小説キャンディキャンディファイナルストーリー後に書かれた、Alexa Kang による二次小説を、ご本人の許可を得て翻訳、編集した日本語版です。編集にあたり、若干のご協力を頂きました。いがらしゆみこ氏、名木田恵子氏が生み出した登場人物にあわせ、二次オリジナルキャラも登場します。