キャンディがポニーの家に戻った時には、子供達は既に眠りについていた。
そっとつま先立ちで中に入り、いつもと変わらないことを確認してから再び外に出た。
そして、今はキャンディの住まいである、ポニーの家の裏手に建てられた、小さなワンルーム型の部屋に入っていった。
ソファーでは、アーロンが医療書を読みながら寝入ってしまっていた。
キャンディは近づいてアーロンの横に座った。
アーロンの寝顔を見つめるキャンディの心には、穏やかさと暖かさがこみ上げてきた。
思わず笑みがこぼれた。
キャンディの気配に気づいたのか、アーロンが目をさました。
アーロンは、キャンディの緑色の瞳が、自分を覗き込むように見つめていることに気づいた。
キャンディの顔はとても近くにあった。「戻ったんだね」
キャンディは頷いた。
「眠ってしまっていたのね。ここで何をしていたの?」
「君を......待っていたんだよ」
アーロンは囁いた。
寝入ってしまう前は、まだ陽は出ていたが、外はもう暗く室内の薄暗い灯りだけが灯っていた。
目の前にいるキャンディは、まるで幻のようだった。
アーロンは、手を伸ばすとキャンディの頬に触れた。
キャンディは、アーロンを見ていると、心が安らぎに満たされていくのを感じ、優しく頬をなでているアーロンの手のひらにギュッと頬を押しあてた。
無言のまま座って、二人でいる瞬間を堪能した。
「......ドレスは気に入ったかい?」
沈黙を破ってアーロンが聞いた。
「......とても素敵なドレスよ」
「君は世界中で最も美しい花嫁になるよ。君がいてくれて、僕はとても幸運さ」
キャンディは、不安げにほほ笑み返した。
「もう、......遅いな。......帰らないと」
アーロンは、ゆっくりと立ち上がりながら、心の中で思った。
(このまま一緒にいられたら......)
出口までキャンディに見送られたアーロンが、去り際に告げた。
「僕は、明後日シカゴに行くよ。医学会があるからね」( 医学会。忘れていたわ )
キャンディは心の中で思った。「おやすみ」
アーロンは、囁くとキャンディを引き寄せておでこにそっとキスをした。
「おやすみなさい」
キャンディは、囁き返すと扉を閉めた。
一人になったキャンディは、今日起こった出来事を思い出していた。
(テリィには、ノーと言わなくてはいけない。わたしは、ジェーン夫人を失望させる気持ちなんて持ち合わせていない......。それに、アーロンを愛している。彼を......傷つけられない。アーロンは、いつも、誰よりも何よりも、わたしを大切に想ってくれるのだから......)
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The One I Love Belongs to Somebody Else 〜別の誰かを愛する愛人(ひと)〜 By Alexa Kang
Fanfic小説キャンディキャンディファイナルストーリー後に書かれた、Alexa Kang による二次小説を、ご本人の許可を得て翻訳、編集した日本語版です。編集にあたり、若干のご協力を頂きました。いがらしゆみこ氏、名木田恵子氏が生み出した登場人物にあわせ、二次オリジナルキャラも登場します。