幸せに包まれ、テリィはわたしを抱きしめると熱い口づけをした。

その夜、テリィの船室でわたし達は長い間語り合った。

──セントポール学院での様々な出来事について。

──学院を去ってからについて。

──そして、二人ともアメリカにいると分かった時に、どれ程お互いを探し求めていたかを。

わたしは、冒険に満ちたアメリカへの帰国の旅を伝えていた。

はじめテリィはわたしの話を大笑いしながら聞いていた。

しかしふいに真剣な表情になるとわたしをきつく抱きしめて言った。

「よく──無事だった、と──」

夜が更けても、船室に戻るとわたしが告げるまで、二人でずっと話をしていた。

船室の扉へ一緒に歩いてきたテリィは、出ようとするわたしを再び抱きしめ、口づけた。

激しくわたしを求めるテリィの口づけに、わたしも同じように応じた。

そして、わたし達は瞬時に悟った──もう、今までと同じではいられないと──。

わたし達は、未知の世界へとお互いをいざないたかった。

テリィは、わたしの顔を見つめていた。

そっとわたしのドレスの肩紐を外しているのを感じた──。

テリィの問いたげに見詰める眼差しは、わたしの答えを求めていた。

わたしは、日記にしたためた一言一言を思い出していた。

どんなにテリィを......。

サザンプトンの港へと追いかけたこと──。

そして、どんなに心の底から叫びたかったか──。

もうこれ以上、この気持ちを抑えていたくなかった。

わたしは、テリィの瞳を見つめ、囁いた。

「......愛しているわ......テリィ」

わたしを見つめ返すテリィの瞳には、今まで見たことがない情熱がみなぎっていた。

テリィの胸板が、激しく動いているのが見える。

ひと呼吸ごとに荒くなる息に堪え、 今にも爆発してしまう感情を抑えようとしているようだった。

わたしは部屋の灯りのスイッチに手を伸ばしたが、テリィはわたしの手を包み込むとそのまま壁に押しあてた。

「駄目だ。明かりはつけたままだ。すべて、焼きつけておきたいんだ」

−−−−−−−−−−−−




わたし達は向かいあい寄り添いながら見つめ合っていた。

手は握りあったまま──。

自分の気持ちを表現する言葉が、中々見つからない。

やっと、わたしは高鳴る胸の鼓動をとき放てた──わたし自身の胸の鼓動──。

どこにわたしを導くかわからない。

聞くことが怖くて、必死になって遮断して、閉じ込めた胸の鼓動──。

その鼓動はかつて激しく燃え盛り、そして一度は消えてしまったけれど、再び熱い炎となって蘇り、わたしを導いてくれた。

今の今まで、それはほんの小さな火でしかなかった。

──テリィとわたしは、お互いの気持ちにやっと素直に向き合う事ができた。

わたしの鼓動が最も激しく高鳴る場所へと辿りついたテリィが、そこに灯るともし火を、燃え盛る灼熱の炎に変えてしまうまで──。

二人の間に溢れんばかりの愛を感じていた。

わたしはテリィの全てをわたし自身に取り込んでしまいたかった。

川で合流した水の流れが混じり合い一つになるように、もう引き離すことなど出来ないように──。

その後わたしは、世間一般の人が思い描くテリュース・グレアムとは、舞台で演じる役のようなのだと知った。

特に女性のファンは、テリィを英雄のように偶像化していた──助けに来てくれて、抱きかかえ、そして攫ってしまう──。

でも実際は違っていた。

あの船での最初の夜、お互いの心をさらけ出せた時、わたし達は16歳に戻っていた──まだ無垢な感情で純粋な心のあの頃に──。

そして、あの夜に気がついたこと──舞台で演じる多くの役柄も役者という顔も脱ぎ捨てたテリィが、ありのままの姿をさらけ出せるのはわたしだけであるということ──。

初めてわたしを抱いた時のテリィの魂は、こんな感じだったように思う。

長い間海をさまよっていたテリィのところに流れ着いた木片のような存在のわたしにしっかりとしがみつき、二度と離さないと誓ったような感じ──。

わたしは、目の前の未来へと向かう大海原の波に乗りながら、テリィが求めてくれる限り、テリィを、テリィの魂が安らぎを見いだせる場所へと導くだろう。

ニューヨークでテリィを置き去りにしたあの残酷な夜、わたしは、間違いを犯した。

それはテリィも同じだ。

テリィの人生に、どれほどいつもわたしが必要なのかを理解できなかったのだから。

その失敗で払った代償は大きかった。

最も苦しんでしまったのはテリィだった。

これからの年月、過ちを償う為ならわたしは、どんなことでもするだろう。

なぜなら......テリィを愛しているから──。

運命にたどり着き、煌びやかな光に満ち溢れた場所を見つける──それは、とても素敵なこと──。




The End





********************************

補足
参考資料
名木田恵子著
小説キャンディキャンディファイナルストーリー下巻
祥伝社 2010年11月10日発行
148頁

「Look Candy.This is like the night we 've first met.」

「Let's get married here, tomorrow.」

「Ge,get merried? Here? tomorrow? Can we do that?」

「The ship's captain. He has an authority to officiate wedding at the sea.」

「What would you say? Let's do it.」

「Are you sure?」

「I, I don't want anything or anyone to ever come between us again. 」

You've reached the end of published parts.

⏰ Last updated: Jan 29 ⏰

Add this story to your Library to get notified about new parts!

The One I Love Belongs to Somebody Else    〜それでも君を愛してる〜  By Alexa KangWhere stories live. Discover now