1年前のクリスマスに、アーロンは自分で彫ったラヴスプーンをキャンディにプレゼントしてくれた。
それは今もキャンディのベッドの上の壁に飾ってある。
キャンディはそのことを思い、温かい愛情が湧き上がってくるのを感じた。
ハーレー宅の玄関の扉を叩きながらも、キャンディの気持ちは沈んでいた。
扉を開けたのはセシリアだった。
「キャンディ!」
キャンディの名前を耳にして、アーロンも出迎えに来た。
「キャンディ!」
アーロンの声は、会えた嬉しさで満ちていた。
しかし、アーロンの幸福感は、より一層キャンディに罪悪感をもたらした。
アーロンは、キャンディを引き寄せて抱きしめた。
キャンディも抱きしめ返していたが、アーロンの顔を見上げ、訊ねた。
「──二人だけで話したいのだけれど......」
「もちろんさ」
アーロンはキャンディの手を取ると、家の外へと導いた。
セシリアは疑惑めいた視線を向けていた。
外に出て二人きりになると、アーロンはキャンディの苦渋に満ちた表情に気づいた。
「何か、......あったのかい?」
キャンディの瞳から涙がこぼれだす。
「......結婚式、......来月には挙げられないの......」
「......どうしてだい?」
アーロンは、困惑して訊いた。
「......アーロン、あなたをとても愛しています。......でも、ここ数日の間で、......他の男性のことも、とても愛していることに気づいてしまったの......」
キャンディは、泣きながら告げた。
驚きを隠せずアーロンは訊ねた。
「キャンディ?一体、......何を言っているんだい?......誰のことを言っているんだい?」
「......ずっと昔から知っている人なの。わたし達は、......とても愛し合っていたわ。でも、......別れてしまった......」
そうして、キャンディは、テリィのこと、スザナのこと、ニューヨークを去ったいきさつを話し始めた。
キャンディの言葉は涙混じりで、泣き止むことも出来なかった。
アーロンは、ただただ驚くばかりで、キャンディが何を伝えようとしているのかわからなくなった。
「......テリィが、......わたしに会いに、......ここに来たの。婚約しているって伝えたわ。......そしてテリィにはノーって言おうとしたのよ。......でもわたし、......でもわたし......」
アーロンは言葉を失い、キャンディを見つめていた。
やがてキャンディは息を整えると、アーロンの顔を見た。
キャンディは、自分が与えてしまった苦しみに満ちたアーロンの瞳を見た。
そして、自分の胸にはナイフが突き刺さっているように感じていた。
「......愛しているわ、アーロン。でも、......テリィのことも愛しているの。 ......どうしたらいいのか、分からないの。でも、他の男性を愛しながらあなたと結婚するのは、あなたへの裏切りだわ。......ごめんなさい。......本当にごめんなさい......。あなたがわたしを許してくれるのか、今もまだわたしと結婚したいのか分からない......。でも、あなたには知っておいて欲しかったの。あなたには、......正直でいたいの......」
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The One I Love Belongs to Somebody Else 〜それでも君を愛してる〜 By Alexa Kang
Fanfiction小説キャンディキャンディファイナルストーリー後に書かれた、Alexa Kang による二次小説を、ご本人の許可を得て翻訳、編集した日本語版です。編集にあたり、若干のご協力を頂きました。いがらしゆみこ氏、名木田恵子氏が生み出した登場人物にあわせ、二次オリジナルキャラも登場します。
第29場キャンディの窮地
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