視界の月夜

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一話

 湖に、輝く月が鏡のように映っている。初夏の満月はなんだか怪しく輝いていた。

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 湖に、輝く月が鏡のように映っている。初夏の満月はなんだか怪しく輝いていた。

 二人の青年が月を眺めながら湖畔に静かに押し寄せる水の音を聞いていた。

 「俺は知らないよ。俺はただの歯科医で厄除けの神だ。今は厄神じゃないよ。」

 男の内、優しさが顔から出ている男が重い口を開いた。

 「歯科医と視界か、ダジャレ言ってるんじゃねぇよ。」

 優しそうな男に並ぶように立っているもう一人の男、タカのように鋭い目を持つ男が不敵にほほ笑みながらつぶやいた。

 「本当に何も知らないんだよ。」

 「俺が何者かお前はわかるか?」

 鋭い目の男が湖畔の柵に腕を乗せ、もう一人の男を見据える。

 「......TOKIの世界の使いだろう?」

 「その通りだ。お前は他の神と違い、Kの事を知っているようだな。」

 男の目がさらに鋭くなり、優しそうな男に威圧をかけた。

 「あんた達の事はほとんど知らないし、Kの事も知らない。それから今回の件は俺じゃない。何度も言っているだろう。しつこいぞ。」

 「そうかよ。まあ、いいや。疑って悪かったな。」

 タカのような男は優しそうな顔の男を一瞥するとその場から消えた。

 その場に残された男が最後に見たのは輝く月に照らされた銀色の髪だった。

 ****

 月は出ているが暗いはずの道、でも今は街灯がついていて明るい。最近の街は街灯がつき、どこへ歩くにも安心して歩ける。

 その明るい夜道を一人の少女が焦った表情で走っていた。夜でもまあまあ車の通りが多い道を駆けていく。目指す場所は近くにあるスーパーである。

 「タイムセール......タイムセール......。」

 少女は閉店間際のセールを狙っていた。

 少女は赤いパーカーに短いズボンという格好でスーパーに駆けこんだ。そしてギリギリで野菜オンリーの半額のお弁当を買った。

 「よし......。今日も危なかった......。」

 少女はほっとした顔でスーパーを出て、お弁当の入っている袋を大事そうに抱え、家への道を足早に進んだ。

 ......お腹すいたし、ちょっと暗いけど裏道使おうっと。

少女は道をショートカットするため、人通りがほとんどない暗い道に足を踏み入れた。

 その途中、変な男に出くわした。

 銀髪のタカのように鋭い目をした男だった。そしてその男はなぜか着物を着ていた。

 ......やだ。こわい......変な男の人がいる......。どうしよう......。

少女は裏道を使った事を後悔した。

「おい。お前、厄神だな?ちょっと聞きてぇ事がある。」

銀髪の男は鋭い目に鋭い声で少女を呼び止めた。

「ご、ごめんなさい。私急いているんで......。」

少女は震える声で精一杯の言葉を発した。

(2016〜2024完結)幻想で和風なSF神さま物語②「TOKIの神秘録」Where stories live. Discover now