(2017完)ようこそ竜宮城編ドラゴンパーク

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たにぐち

 神々の住まう場所、高天原。その高天原の南に神々のテーマパーク、竜宮城があった。

 ここは龍神達の生活する場所でもあり、龍神達の仕事場でもある。

 テーマパークなので龍神達は他から来る神々をもてなす仕事を請け負っていた。

 これはその高天原内の竜宮で働くある龍神の日常話である。

 「おい、そこのお前、なんで俺様んとこに来たんだよ......。」

 黄緑の短い髪に謎のシュノーケルを差している着物姿の男が呆れた顔で目の前に佇む少女を見ていた。

 「はいぃ!私は谷龍地神(たにりゅうちのかみ)と申しますっ!志望動機は私が祭られていた谷村(たにむら)の活性化のためですっ!元気と勇気で頑張ります!よろしくお願いしますっ!」

 少女は緑色のおかっぱ頭を何度も男に向かって下げた。

 「あー......いやいや......志望動機を聞いたんじゃなくてだな......。なんでここに来たのかって聞いてんだよ。」

 黄緑の髪の男は頭を抱えながら少女に声をかけた。

 「え?で、ですから......谷村の活性化のため......」

 「ちげぇって!お前、ここ、竜宮と勘違いしてんだろ!ここは竜宮じゃねぇよ。ここは竜宮ツアーコンダクターの詰め所だぜ。お前さ、今日、竜宮で面接受けにいくやつの一神だろ?」

 「え!」

 男の言葉で少女の顔がじわじわと青くなっていった。

 少女がそっと上を見上げると男の頭の上辺りに『ツアーコンダクター』と汚い字で看板がぶら下がっていた。

 「とんだ馬鹿野郎だな。もう面接時間過ぎちまってんぞ。オーナーは時間にうるせぇからなあ。......遅刻は特に嫌うぜ?竜宮はここからかなり遠いし、もう間に合わねぇな。かわいそうに。」

 「そんなあ......。」

 少女はぺたんとその場に座り込むとしくしく泣き始めた。

 「あ!おいおい!泣くなよ。......んー......お前、まだ龍神になって間もないだろ?......仕方ねぇから俺様がオーナーの代わりに面接してやるぜ。外見年齢は十四......五だろ。」

 「はい......今年で十四です。本当に面接してくれるんですか!?」

 少女は先程の絶望しきった顔から一転、目を輝かせた。

 「面接はしてやる。後は天津彦根神(あまつひこねのかみ)、オーナーの判断だ。ああ、俺はツアーコンダクターの龍神、流河龍神(りゅうかりゅうのかみ)だ。皆からはリュウと呼ばれている。」

 リュウと名乗った目つきの悪い緑の髪の男は椅子にドカッと座ると指でこんこん机をたたいた。

 「は、はい!お願いします!」

 少女は再び深くお辞儀をした。

 「で......お前、名前なんだっけ?谷口(たにぐち)だっけ?日本人の苗字みてぇだな。」

 「あ......いや......谷龍地神(たにりゅうちのかみ)です。『たにりゅうち』です。」

 少女はひかえめにリュウが言った名前を訂正した。

 「たに......なんだって?『たにぐち』にしか聞こえねぇな......。滑舌が悪い。んん......タニでいいか。」

 リュウは勝手に『タニ』というあだ名を少女につけた。

 「......たに......。」

 勝手にあだ名をつけられた少女、タニは困惑した顔をリュウに向けた。

 「んで......志望動機はさっき聞いたし、後は......オーナーは何を聞くかな......。んまあ、こんなんでいいか。」

 「......では......採用......。」

 タニが輝かしい顔でリュウを見据えたがリュウは机をこんこんと指で叩くと首を横に振った。

 「採用かどうかはわからねぇ。俺はお前を推しておいてやるよ。だけどなあ、オーナーの面接に出てないってのが痛ぇよなあ。ああ、一つ、オーナーが面接の最後に絶対言う言葉がある。」

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⏰ Last updated: Feb 14 ⏰

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「TOKIの世界譚」龍神編Where stories live. Discover now