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夢を見るんだって。
最初は何も無い部屋に居る夢。ただ、それだけ。それだけのことが、なぜか怖い夢。 翌日は、足元が、どろどろする夢。何かと思っていたら、そのうち固まってくるの。 更に翌日は、足が完全にその泥に埋もれている夢。そこまできて、ああ、これはセメントだって気付くんだけど、気付いたところでもう遅いのよね。この頃になると、もう、大分いやな予感がしてくるわけ。 次の夢は、案の定、膝までセメントに埋もれているの。朝方にはもう、膝まで固まる。徐々に固まっていくセメントを肌で感じるのは、凄く怖いんだって。 次の夢は、腰まで漬かる。 次はお腹まで。 次は胸まで。 そうして......ついに、顔まで来た時にね。 恐る恐る、今更のように気付いて、見るのよ......。 何をって、上よ、上。天井。 そうしたらね......。 作業服着た髑髏(ドクロ)が、手に持った柄杓からセメントを少しずつ流し込んでいるんだって。 え? この話? ううん、ここで終わり。これ以降の夢......最後の夢の話は、誰も知らない。 だって。 その子、翌日、ベッドで凄い形相で窒息死していたんだもん。 * 『煩わしい都市伝説、駆除します』 そう書かれたチラシを片手に、私、春沢明美は帰り道とは反対の方向へと歩いていた。 モデルルームだらけの住宅街を抜け、落書きばかりの塀を右に曲がり、更に柿の木の立派な民家を左折すると、その屋敷はある。 ――化け物屋敷―― うちの高校の生徒は皆そう呼んで居る、私のクラスメイトの少女......神無鞠亜の屋敷。 そう、彼女の、屋敷だ。彼女以外にはお手伝いさんだけが住んでいる。そのお手伝いさんも、常にローテーションで違う人が来るらしく、実質、本当に、家族と呼べる者なく、一人で生きている少女の家。 「はぁ......」 嘆息する。正直なところ、私も、あの子にはあまりいい印象がなかった。......ただ、無口、というだけなら、私は気にしない。ただ、あの子は......ちょっと、異質すぎた。 常に何かにピリピリしているかと思えば、唐突に、授業中に「思いついた!」と叫んで勝手に出て行ってしまったり、更には、学校中に変な呪文を油性マジックで書きまくったこともあった。 だけど、それでも、なぜかいつもおとがめなし。誰も怒らない。怒れない。生徒も、なんとなくだけど、子供は子供なりにそんな彼女のただならぬ背景に気付いてしまい、遠巻きに、関わらぬように見つめるだけの存在。......それが、神無鞠亜。 でも......今は、今日は、そうも言っていられない。 最近、彼女は学校内で新たな奇行を始めた。色んなところにベタベタ、チラシを張り始めたのだ。......自分の家の住所と、そして......。 『煩わしい都市伝説、駆除します』 その、書きなぐったような文字。皆が、またか、と呆れていた。 私も、そうだった。 だけど今となっては......怪異に関わった今となっては、妙なことに、彼女が、一番頼りになるように思えたのもまた事実で。 お姉ちゃんに言ったら笑われるだろうな。あの人は、幽霊とか全然信じない人だから。死んだ人のこと考えている暇あったら、今生きている人を癒しなさい、なんて言うんだろう、あの看護師馬鹿の姉は。 でも......あるんだよ、やっぱり、お姉ちゃん。
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