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totoro151

on Jul 01, 2009
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インビジブル ゴースト⑥

1


武内 護の観察を辞めた。

そして、私は再び式見蛍の生活を見守り始めていた。
武内のあの生活を見てしまった後だからか、式見蛍の生活にはやはり心洗われるものがあった。

私と同じく俗世に執着が無いからだろうか。彼の生活は淡々と、スッキリとしていて、なにか、「プライベートを覗いている」という気にはならなかった。
冷たそうな目つきやロボっぽさの割には、無表情で意外に優しいことするヤツでもあった。

困っている人を見ると、ほぼ百パーセント、自分も困った表情をしながら、最終的には駆け寄る。
子供の泣く声が何より嫌いらしく、泣いている子供を見かけると、挙動不審に周囲をキョロキョロしてから、誰も見ていないのを確認して――照れながら、飴を上げたり、撫でたりして泣きやまして、子供がキョトンとし始めた頃にはそそくさと去っていく。
お礼を言われるのが苦手。いいことをしても、誰かに感謝される前に去ろうとする。どうやら礼を言われた際の対応がよく分からないらしい。......私でも同じかもしれない。
軽いラブシーンとかでも見るのは不得意。テレビドラマでそういうのが流れると、無言で、顔を赤くしながらぴっとチャンネルを回し、そして、ラブシーンが終わるとまた戻す。
人の寄せる好意に全くといていいほど気付かない。どうやら彼の中には「自分を好きになる人なんて居るもんか」みたいなことになっているらしい。ちなみに神無鈴音、真儀瑠紗鳥以外にも彼のことを気にかけている女子が数人居たのだが、まあ、それは語るまい。......なんか私も面白くなくて、あんまり見なかったし。
意外と器用で頭がいい。しかしながら、致命的に「やる気」というものがないので、結果として平凡な人生に落ち着いている。
妹との電話が長い。確実にあちらからかかってくるのだが、それに気付くと、彼はびくっとする。そして、電話にでると、それ以降、彼の口数はかなり減る。どうやら、話し手は専ら妹のようだ。
たまに真儀瑠紗鳥からの電話にも非常に怯える。
神無鈴音からの電話の場合には、それらの鬱憤を晴らすように、攻めに転じる。翌日神無鈴音は確実に不機嫌なのだが、それはそれと割り切っているらしい。
一人でも、食事前には「いただきます」、食事後には「ごちそうさま」、寝る前には「おやすみなさい」などと、律儀に言う。時折私が見えているんじゃないかと錯覚する。

とにかく......私は、彼を見ているのが楽しかった。そう、楽しかったのだ。

もう戸惑わなかった。その自分の感情に。

これは恋なんて呼べるのかは分からないけど、でも、確実なのは、どんな意味であれ、私は彼をどうやら「好き」......いや、「大好き」らしいということだ。まあ、この場合の「大好き」は、「大好物」という意味でのものでもあるかもしれない。
とにかく面白かった。初めて、他人のことをもっと知りたいと思った。関わりたいと思った。この人の人生に、関わりたいと、思ってしまった。

「もっと死ぬ前に......」

そう呟いて、でも、私はちゃんと死ぬ前に彼に会っていたことを思い出した。そうだ。そこを勘違いしたら駄目だ。死んで、こうして傍でずっと観察したからこそ、私は彼に惹かれたのだ。今でも私が生きていたとしても、結局、空気を目指しているだけで、式見蛍に好意を抱くことはなかったろう。
そう考えると......なにか、少しだけ、胸がしめつけられた。

ちらりと彼の部屋のカレンダーを見る。
この切なさの原因は、タイムリミットのこともあるのかもしれない。
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