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totoro151

on Jul 01, 2009
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インビジブル ゴースト③

1


正直なところ、事件に関する捜査は殆ど進まなかった。
ただ、だからといってこの期間に手に入れた情報が何も無いかというと、そういうことではない。
順を追って説明しよう。

始業式になるまで学校で出来ることはないと判断した私は、自分の事件の捜査本部が置かれた警察署を訪れた。
私の事件は警察はかなり重要視しているようだが、実を言えば、世間的にはあまり話題になってない、というちぐはぐな状況のようだった。人間的関係をとにかく希薄に保っていた私の事件に対し、特に噂をするような人間は居なかったが、ただ、純粋に事件だけ見ると中々油断出来ない事件だったのだろう。

......いや、まあ、そんなことはいい。私がこの期間で一番驚いたことは、実は自分の事件以外のところにある。
先ほど私は警察署を訪れたと言ったが、厳密には、署内には入っていない。いや、「入れなかった」。どうやら、大手の警察署には、驚くべきことに霊体を退ける結界が張ってあるらしい。流石に警察全ての人間が霊能力を容認しているとは思えないが、どうやら、かなり上層部とか深い部分では、霊能力というのは国家的に認められた力であるらしい。
躍起になって署内に入ろうと色々うろついてみると、屋上の一画に「神無~」と描かれた札があっているのを見つけた。詳しくは分からないが、この、国家に絡んだ霊能力者というのは、神無云々とかいう宗教みたいなものらしい。

自分の事件以上にこれはカルチャーショックだった。が、私がわざわざこの「神無」という部分を意識したのには、もう一つ理由がある。

これは始業式以降、式見蛍につきまとっていて知ったことなのだが。

彼の友人には「神無鈴音」という少女がおり、更には彼女、霊能力者だったのだ。これは、関連性を無いと考える方が無理である。......とはいえ、私の事件への関連は微塵もないのだろうけど。
とりあえず、どうやら「神無」というのは中々巨大な霊能力家系なのかもしれないということは、想像がついた。
この「神無鈴音」という子に限っていえば、とても国家云々に関わっているとは思えなかったから、恐らくは神無は神無でも上層と末端があるのだろう。彼女はどちらかといえば末端だと思われた。

ただ、一つ驚かされたのは、神無鈴音が私の存在を微妙に察知したことだ。

「ん~?」

と、式見蛍に付き従っていた私の居る空間を観察して、「気のせいかなぁ」と唸っていた。結局は「気のせい」という結論に落ち着いたみたいだけれど、私は深く感心していた。今までテレビで取り沙汰されている霊能力者達のところを数件訪れてみたけれど、私の存在に、その気配にさえ気付く人間は皆無だったから。神無家というは「本物」で、この普段ぽけぽけした鈴音という子も、実は相当の実力者なのだと思われた。......まあ、性格はかなり平和なようだけど。

この鈴音という子を、式見蛍の友人という観点から見た場合。私にはどう見ても式見蛍に好意を寄せる女の子にしか見えなかった。

いや、なんていうか、すっごい分かりやすいのだ。ええ、もう、これはコントなんじゃないかと思うくらい、すっごく。恋愛の機微なんて微塵も分からないこの雪瀬空だって、照れてしまうほどに、式見蛍にベタ惚れに見えて仕方ない。

もう......ね。ほら......私でも、「はっ......」と渇いた笑いを漏らしてしまいましよ。ええ、さすがにね......。「くっはぁ」と、この私でさえ言ってしまいましたよ。しかもそれに全く気付かない式見蛍がまたなんか凄い。もう、クラスの全員がかなり生暖かい視線で見ている状況なのだ。
ちょっと記すと......。

神無鈴音のベタベタ言動&式見蛍の鈍感行動の一例。

「きょ、今日も購買なんだ、蛍」

「ん? まあ、他に昼飯の手段無いからな」

「えと......そ、その、て、手作りお弁当とか......た、食べたいと思わない?」

「ん、そりゃ、パンよりはそっちの方がいいな」

「あの......え、えと、ああ、と、その、あ、明日、その、ほら、なんとなく、弁当を作りすぎる気がするのよ。だ、だから、えと、あ、あのね。その、わ、分けてあげてもいいかなー、なんて」

「ん、さんきゅ。じゃ、貰う」

「......あ、うん」

「............」

「............」

「......えと、それだけ」

「おお」


以上、鈍感式見蛍と不器用神無鈴音の日常会話例である。直後の神無鈴音の落胆ぶりもさることながら、式見蛍の「気付かないっぷり」にはいっそ神々しささえ感じた。この二人はわざとコントをやっているのじゃないかと思った。恋愛に不器用とか、そういうレベルで済まされない二人なのだ、なんか。神無鈴音の回りくどさと挙動不審さもそうだし、式見蛍の「鈴音は友人認識」っぷりも相当なものである。

ともかく、神無家がどうこうとか、容疑者がどうこうとか抜いても、普通に目立つ二人だった。

そして、しばらくそんな二人のドタバタを眺めて過ごし、ある時、ふと気付くのだ。

「って、捜査全然進んでないし!」

............。

色んな意味で私の捜査もかなり手詰まりだった。


――式見蛍に物質化能力が顕現するまであと一ヶ月半――

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